シリーズ:なぜ組織が成長するためには適切な「余剰=あそび」が必要なのか?(1/3)
2018.06.08





おはようございます。

宮城県よろず支援拠点コーディネーターの佐藤創です。

今回から掲題のテーマで、3回にわたりミニコラムを発信いたします。ミニコラムは毎週金曜日にお届けします。




さて、みなさまは現在の人手不足もあり、中小企業では朝から晩までフル稼働の状況ではないでしょうか?

目の前の作業に追われ、気が付いたら定時を過ぎ、そこから残務処理を始める、、、なんてことも多いと思います。




忙しいのは良いことですが、一方で余裕がなさすぎる事の弊害は発生していませんか?




それは、「余裕がなくなることで組織の長期的な成長のための活動ができなくなる」ということです。

分かりやすく言うと「組織の成長が阻害される恐れがある」ということです。




それはなぜなのでしょうか?


これから3回にわたり、いろんな角度からちょっとひも解いていきましょう。
頭の体操と思ってお付き合いいただけますと幸いです。






■人類の発展過程に見る「余剰」の効果


余裕とは、経営における「余剰」、つまり「あそび」と言えるでしょう。

なぜ「余剰」=「あそび」がないと組織が成長しないのでしょうか?




初回は、いったん経営学を離れ、「民族学」、つまり人類の発展過程から「余剰の効果」を探ってみます。

おそらく興味深い事実が浮き彫りになるかと思います。



人類の発展過程は、実は組織の発展過程にもそのまま当てはめることができます。

いわゆる歴史から学ぶということです。


さて、内容に移りますが、過去にポリネシア地域において、距離的にはかなり近いにも関わらず、まったく異なった社会構造を持つに至った2つ部族がありました。

(参考文献:銃・病原菌・鉄、ジャレド・ダイヤモンド、草思社、2012年)


この2つの部族はその後戦争を起こしますが、一方の部族がもう一方の部族を圧倒して制圧することになります。






一方は、やや寒冷な地域だったため農耕があまり発達せず、主に狩りを行って食糧を確保する狩猟採集民族です。狩猟を行うため1人1人の狩りのスキルは高く、腕っぷしも強いです。


もう一方は温暖な地域にいたため農耕が発達した農耕民族です。農業に従事している人の狩りや戦闘能力は低く、温厚な民族です。


狩猟採集民族 VS 農耕民族というわけです。


どちらが圧勝すると思いますか?










結果は、圧倒的に農耕民族なのです。


理由はこうです。



農業に従事する事の最大のメリットは、食料を備蓄することができるという点です。
備蓄をするので食糧に 余剰=あそび ができます。


すると、食糧生産だけに全人口が従事する必要がなくなるので、装飾品などのモノづくりをする職人が生まれたり、武器職人が生まれたり、政治家が生まれたり、職業軍人が生まれたりして、社会全体が高度化していきます。



一方、狩猟採集民族は食料の備蓄がしにくいため、食糧の確保にほとんどの人手が取られてしまい、政治家や職業軍人が生まれにくくなりました。


そのかわり、限りある食料を分配するしくみ(今でいう社会保障でしょうか)が発達します。



歴史は残酷で、これら両部族が戦争を起こし、最終的には農耕民族が、狩猟採集民族を圧倒します。

職業軍人や政治家のいる組織立った民族が、狩猟採集民族を圧倒するという事実は、世界の歴史で何度も何度も繰り返されます。


現在も世界の各地で狩猟採集民族が少数存在していますが、彼らのなかで高度な文化と経済を持っている民族は1つもありません


これは世界の歴史で証明されている事実であり、不可逆的な真実でもあります。











■会社における余剰

会社に置き換えて考えてみましょう。


すべては、「食べるために働くという人の占有率」で決まります。




「食べるために働く人の占有率」が高い組織とは、全員がフル活動して売り上げを計上しないと組織が成立しない会社です。


朝から晩まで働きますが、備蓄(余剰)がないため、永遠に食料(売上)を求めて働きます。狩猟採集型の会社といえるでしょう。


営業で飛び回って案件を獲得し、ほっとするのもつかの間で、また次の営業案件の獲得に飛んでいく、、、組織全員がこのような状態の会社は典型的な狩猟採集型の会社です。






一方、「食べるために働く人の占有率」が一定程度の割合の組織とは、経営戦略や事業企画、マネジメントなどの高度化を担う人材が存在する会社です。


こうした直接売上を生まない高度人材を抱えられるのは、食料の余剰があるからです。これは農耕型の会社といえます。


特定事業領域で専門性を持ち、安定した顧客基盤を抱えるなどし、安定したキャッシュフローを生み出すことができると、経営基盤も安定します。


そして高度人材を抱えることで、人の集まり ⇒ 組織 へとグレードアップし、経営の高度化が実現します。







■あなたの会社は狩猟採集型?農耕型?




もちろん、現実のビジネスの世界ではどちらかが一方的に良いということはありません。

ただしスタッフ部門や経営意思決定を行える高度人材を抱えているかどうかは、経営の高度化の度合いに大きな影響を及ぼします。




経営が高度化することで、大きな事業戦略を描くこともできるようになります。

そういった視点からすると、「全員が忙しく営業に駆け回っている」のは、一方的に手放しで喜べる状況でもないのです。







狩猟採集型の事業とは、分かりやすく言うと自動車販売のような事業を言います。

何度も顧客にアプローチをして、販売額の大きい案件を受注することを目指します。大きな売上が立つのですが、だからといって営業の手を緩めることはできません。また次の案件を獲得すべく、営業を行うような、そんな事業です。







農耕型の事業とは、分かりやすく言うと新聞販売のような事業を言います。

新聞記事を書くための大がかりな体制、また印刷・配達などの全国的なインフラを整備して、初めて消費者に新聞を届けることができます。

購読者が増えて損益分岐点を超えれば、長期にわたり安定的な収益を得ることができますが、損益分岐点を上回るまでに長い時間と、大きな投資が必要になります。

まさに「農地を耕す」ことから始める事業です。




これら狩猟採集型事業と、農耕型事業は、共にメリット・デメリットがあります。

特に、創業したばかりの企業や、事業基盤がしっかりしていない企業が農耕型事業に手を出すことはNGです。

黒字化するまでに長い時間がかかり、また財務面でも負担が大きいからです。







だからといって、いつまでも狩猟採集型の事業ばかりやっていては、経営の安定化が図れません。

このバランスを取ることが重要ですし、如何に既存の狩猟採集型事業から、部分的にでも農耕型事業に転換していくか、そのテクニカルな経営判断も求められます。




このあたりの、「狩猟採集型事業から、部分的にでも農耕型事業へと転換するノウハウ」については、私がよろず支援拠点で行っているミニセミナー(~入るを量り出ずるを制す~利益を確保する 「勝つため」 のビジネスモデル活用術)で詳しく解説していますので、ご興味があれば参加ください。







今風に言うと、ストックビジネス=農耕型事業 という言い方ができます。




さて、次回は「生物学」における、組織的な余剰の効果 を解説いたします。

最後の3回目では、「経営学」に立ち戻り、ストックビジネス=農耕型事業 構築のための具体的なヒントをお届けしたいと思いますので、お楽しみにしてください!




最後まで読んでいただきありがとうございました。

※ストックビジネス構築の個別ご相談も、よろず支援拠点で受け付けますので、ぜひご連絡くださいませ。



<筆者紹介>
佐藤 創(さとう そう)。中小企業診断士、および高度情報処理技術者、キャリアコンサルタント。

「変化を求め明日を企てる事業者様の良き参謀役」として、ビジョン実現に向け経営者と伴走しながら共に汗をかく、ハンズオンでの支援を身上とする。独自のビジネスモデル分析による経営改善手法が好評。

得意な支援ジャンルは、新規事業開発・事業戦略による売上拡大、IT導入・活用による生産性向上および販路開拓、金融支援(リスケ等)を伴う経営改善・事業再生。



<連載記事>シリーズ:なぜ組織が成長するためには適切な「余剰=あそび」が必要なのか?

第1回記事
第2回記事
第3回記事

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