営環境の分析に役立つかも!?政府系のデータサイトを見てみよう(2/3)
2018.07.27
みなさんこんにちは。

宮城県よろず支援拠点コーディネーターの鯨井文太郎です。経営改善や事業再生に関する支援を中心に担当しております。


前回から3回に渡り、「経営環境の分析に役立つかも!? 政府系のデータサイトを見てみよう」と題して、下記の通り3つのサイトを紹介していきます。

 1回目:RESAS(地域経済分析システム)
 2回目:J-STAT(地理情報システム)
 3回目:検討中・・・


RESASとJ-STATは、地域の人口動態や経済環境の簡易な分析に活用できます。

 前回紹介したRESASは、様々なビッグデータが参照できるので、地域や全国の市場動向を大局的に捉えることが出来るシステムです。

 
 今回紹介するJ-STATは周辺の人口動態など周辺市場の環境を分析するのに適したシステムです。ですので、飲食店や小売店など消費者向けのビジネスを営んでいる事業者様にとって、商圏分析を行う際にも参考になるシステムと言えます。


 試しに、宮城県よろず支援拠点のサテライトオフィス周辺について、簡易な環境分析に挑戦してみましょう。

 例えば、宮城県よろず支援拠点のサテライトオフィスから、徒歩5分圏内の区域を特定してみると、以下のような形になります。




 小さくて分かりづらいですが、緑の線で囲まれている部分が当拠点の徒歩5分圏内です。北は作並街道を少し越えた辺り、南は宮城県庁の少し手前、西は北四番丁駅を越えた辺り、東は宮城県商工振興センターを超えたあたりまでが、徒歩5分圏内と表示されています。

 次に、範囲内の人口動態について調べてみます。J-STATでは、下記のように人口に関する情報が、分かりやすく提示されます。直近の数値は平成27年と、若干古い数値となりますが、国勢調査の数値ですので、信頼性は高いといえるでしょう。




 ちなみに、宮城県よろず支援拠点のサテライトオフィスから徒歩5分圏内の人口は1,241人のようです。この他にも、年齢層別人口や、単身者や2人以上世帯など種類別世帯数なども分かります。

 下の図は、世帯数分析の続きです。この区域内では、主世帯数837のうち、11階以上ある建物に住む世帯が350もあるそうです。





 J-STATの凄いところは、人口だけでなく、事業所数やその業種、事業所の従業者数までが分かるところです。下の図でそれが分かります。




 これも、経済センサスという総務省の調査データからの引用なので、信頼できるデータと言えます。上記データによると、区域内の事業所数は279事業所、そこで働く従業員数は4,466名という結果が出ています。

 先ほどの人口分析は1,241名でしたが、事業所で働く従業員の数は4,466名という結果です。ですので、働く人向けの事業を興したいと考えている事業者がいれば、この区域は有力な候補地となります。具体的には、飲食店や惣菜・弁当販売などで事業を興したい事業者にとって、この区域は候補地となりえます。

 但し、同区域内で35事業所ある(これもJ-STATで分かります)宿泊飲食サービス業、つまり同業他社に対して、どのように差別化や競争優位性を発揮していくかを検討していく必要はあるでしょう。

 以上の様に、掲載スペースの都合上、今回はとても簡易な形ではありますが、J-STATを活用することで、周辺環境の分析を行うことが出来ます。(特に飲食店や小売店を経営されている)事業者様は、是非一度、当システムを活用することをお勧め致します。

 次回の内容は未定ですが、引き続き、私から政府系のデータサイトについて紹介させていただければと考えています。

 ここまで、お付き合い頂きましてありがとうございました。また次回お会いいたしましょう。ありがとうございました。
2018.07.27 08:00 | 固定リンク | 経営ミニコラム
経営環境の分析に役立つかも!?政府系のデータサイトを見てみよう(1/3)
2018.07.23
こんにちは。

宮城県よろず支援拠点コーディネーターの鯨井文太郎です。経営改善や事業再生に関する支援を中心に担当しております。

今回から3回に渡り、「経営環境の分析に役立つかも!? 政府系のデータサイトを見てみよう」と題して、下記の通り3つのサイトを紹介したいと考えています。



 1回目:RESAS(地域経済分析システム)
 2回目:J-STAT(地理情報システム)
 3回目:検討中・・・



RESASとJ-STATは、地域の人口動態や経済環境の簡易な分析に活用できます。

 というわけで、まずはRESASを見てみましょう。



【RESAS】とは

RESASとは「産業構造や人口動態、人の流れなどに関する官民のビッグデータを集約し、可視化するシステム(経済産業省HPより)」とのこと。官民のビッグデータが参照できるのですね。ちなみに、経済産業省と内閣官房(まち・ひと・しごと創生本部事務局)が提供しています。

検索サイトで「RESAS」と検索していただくと、以下のようなサイトにたどり着きます。




 こんな感じのサイトです。



 参照できるデータは以下の通りです。



 
人口や産業構造だけでなく、外国人消費や不動産取引に関するデータまであります。

全部を紹介したいところですが、今回は「3.産業構造マップ>小売卸売業(消費)>消費の傾向(POSデータ)」というところを覗いてみましょう。




 ↑こんな感じです。簡単です。地域の飲食料品や日用品のPOSデータが参照できます(但し生鮮食品のデータは参照できないようです)。



 下の図は宮城県内における品目毎の購入金額の割合です(2016年)。アルコール飲料の割合は30.51%と、多いような気がします・・・。



 
そこで、全国と比較してどうなのか。次のグラフを見てみましょう。



 上のグラフから、飲料の消費量に占めるアルコール飲料の割合が分かります。上の横棒グラフは宮城県(指定地域)、下の横棒グラフは全国平均を示しています。水色の部分がアルコール飲料の割合を示しています。アルコール飲料の割合が多いです。

 ですがこのグラフだけで、我らが宮城県では多くの人がアルコールを大量に摂取しているのだ!と断定することは出来ません。なぜならば、上のグラフは割合だからです。例えば、宮城県では清涼飲料などの消費量が極端に低いのかも知れません。

 そこで、もう一つのグラフを見てみます。



 小さくて見づらいかもしれませんが、上のグラフから、1000人あたりのアルコール飲料の購入金額が分かります(単位は0.00円です)。各県ごとにランキング形式で示されています。朱色の棒グラフが、我らが宮城県です。2位です(3位以下とは僅差な気もしますが・・・)。宮城県民は飲みすぎ注意ですね。


ちなみに、上位5県は①秋田県、②宮城県、③熊本県、④島根県、⑤北海道となっていました。

※但し、以上のデータはスーパーやドラッグストアのレジを通過したPOSデータを基に作成されたデータであるという点に注意が必要です。つまり飲食店などでの消費量は含まれていません。上位県では外食よりも、自宅内での晩酌などが好まれている、ということかも知れません。




 このような形で、飲料・酒類の消費量一つを取っても、なかなか興味深い分析が出来るのがRASESです。前述の通り人口や産業構造、外国人消費から不動産取引に至るまで、様々なビッグデータが参照できるので、地域や全国の市場動向を大局的に捉えたいときにお勧めのシステムです。




 以上で今回のミニコラムを終了致します。お付き合い頂きまして、ありがとうございました。




次回は引き続き私の2回目のコラムです。J-STAT(地理情報システム)について紹介いたします。
2018.07.23 08:00 | 固定リンク | 経営ミニコラム
小さな会社が海外販路開拓に取り組むステップ(3/3)
2018.07.13


こんにちは。

宮城県よろず支援拠点コーディネーターの細野です。

「小さな会社が海外販路開拓に取り組むステップ」と題して、海外展開には興味があるけれども、具体的にどういうステップで進めていけばいいかイメージがわからないという方向けに、取り組みのステップを3回に分けてご紹介しております。

第1回目は、事前準備。

第2回目は、国内取引を通じて海外に商品を売る。

第3回目(今回)は、直接、海外の取引先に商品を売る。

・・・といった流れとなります。




では、さっそく本題に入ります。



今回からはいよいよ直接、海外の取引先に商品を売る方法についてご紹介していきます。

前回は、自社の商品を取り扱ってくれる国内の輸出会社や商社等を探すということでしたが、今回は海外の取引先を探すことになります。

そこで問題になるのが、海外のどんな会社を探せばよいのかということです。日本人の感覚だと卸売業をイメージされる方が多いのですが、海外では、卸売業というものが存在しない国が多いです。

B2B取引であれば、通常は、輸入ができるディストリビューター(販売代理店)を探すことになります。

海外ディストリビューターの探し方については大きく分けて以下の4つです。




1. 展示会への出展
前回エントリーでは、国内の輸出会社や商社等を探すために、国内展示会に出展するということを書きました。

今回のターゲットは、海外のディストリビューターです。海外の展示会はもちろん、国内の展示会でも多くの海外バイヤーが来場しています。

現在、国内、海外問わず、様々な展示会が開催されています。どういった展示会があるか調べるには、ジェトロの「世界の見本市・展示会情報(J-messe)」が便利です。

基本的な注意点としては、前回エントリーでご紹介した通りです。


日本国内の展示会の場合は、バイヤーの主な目的は情報収集なので、その場で注文が取れることはあまりありませんが、海外の展示会の場合は、その場で注文をするつもりで参加するバイヤーも多くいます。ですので、海外の展示会に参加する際は、決裁権を持った人が参加するようにした方がよいでしょう。「持ち帰って検討します」では逃げられてしまう可能性があります。

また、海外の展示会の場合、来場者の属性をあらかじめ確認しておいた方がよいです。

展示会によっては、バイヤーではなく、普通の一般消費者が普通に買い物に来ることがあります。残念ながら、一般消費者にいくら売れても、その後の継続取引につながることはないので、販路開拓には繋がらないと考えてください。そのあたりは展示会主催者によく確認しておくべきでしょう。



2.訪問営業

これは紹介無しで、現地の会社を訪問して営業を行うことを指します。もちろん、訪問先にはメールや電話などであらかじめアポイントを取った上で訪問するので、いわゆる飛び込み営業とは異なります。
具体的な手順としては、まずは訪問先の候補をリストアップします。

リストアップ方法は、インターネットで調べるのが効率的です。有料にはなりますが、ジェトロの「海外ミニ調査サービス」なども使えます。

リストアップができたら、あとはそのリストに対して、個別にコンタクトを取っていくだけです。いきなり電話するのはハードルが高いということであれば、メール等でも構わないです。日本商品に興味を持っている会社は多いので、アポイントを取るのはさほど難しくはないはずです。ご自身が現地に行ける日程を確保して、その期間にまとめてどんどんアポイントを入れていきましょう。




3.インターネット

次にインターネットを活用した販路開拓ですが、これは大きく分けて、B2BとB2C、つまり対企業向けか、対個人(消費者)向けに分けられます。

B2Bであれば、
・ジェトロの国際ビジネスマッチング(TTPP)(無料)
・アリババのアリババワールドパスポート(有料)
などのマッチングサイトがあります。

これらのマッチングサイトはどちらかというと見込み客集めに近い感じです。商品や会社の情報をインターネット上に掲載し、バイヤーからの問い合わせを待つ形となります。

また、逆に「こういった商品を買いたい」というバイヤーの情報掲載もあるので、自社の商材がマッチする場合には、問い合わせを出してみてもよいでしょう。

B2Cであれば、いわゆる越境ECになります。

これは日本にいながらにして、直接海外の消費者に向けてインターネットを通じて商品販売を行うということで、最近流行っていますが、海外の消費者と直接やり取りする必要があることから相応のプロモーションや体制構築が必要になります。





4.紹介

これは、知り合いなどを通じてディストリビューターを紹介してもらうということです。
一見、簡単そうに思えますが、紹介者と紹介先との信頼関係を守るためにも、そうそう簡単に、誰でも紹介するというわけにはいかないというのが実際のところです。

また、よろず支援拠点をはじめとする、いわゆる公的支援機関の場合、立場上、直接のバイヤーの紹介はできないというのが原則です。(民業圧迫につながるため)

民間の海外展開支援会社の場合ですと、ビジネスとして紹介を行っているところがありますが、当然ながら相応に費用がかかります。

以上、海外販路開拓に取り組む際のステップをご紹介してきました。

まずはイメージだけでも掴んでいただけたら幸いです。
より具体的なことが知りたい!ということであれば、よろず支援拠点にご相談していただければと思います。
お読みいただきありがとうございました!





★★★
宮城県よろず支援拠点と宮城県商工会連合会の主催で海外展開セミナーを開催します!

3名の当拠点コーディネーターが、中小企業、特に小さな企業や個人事業主でもできる海外販路開拓の具体的な方法について事例を交えてお話します。

セミナータイトルは以下の通りです。

1.「海外展開を進めやすいのは、こんな企業」(渡邊コーディネーター)

2.「小さな会社でもできる海外販路開拓」(細野コーディネーター)

3.「次はベトナム、カンボジア!~食品輸出をする前にするべきこと~」(田中コーディネーター)

※内容については変更になる場合がございます。

開催日・場所は以下の通りです。
日時:7月26日(木) 13:00~15:00(受付12:30~)
会場:TKPガーデンシティPREMIUM仙台西口 ホール8A



お申込みは当拠点ホームページから!
http://www.yorozu.miyagi-fsci.or.jp/pdf/overseas.pdf


またはお電話でも承っております。(TEL:022-393-8044)

<筆者紹介>
細野 哲平(ほその てっぺい)。中小企業診断士。経営コンサルタント。

仙台・宮城を中心に、「会社の将来をとことん一緒に考える身近な経営パートナー」として、徹底的に社長の立場に立った経営コンサルティングを行っている。

東京のIT企業でWeb系のシステムエンジニアとして多くのシステム開発に携わった後に、中国の北京に約2年間居住して日系企業の中国進出事業に取り組む。
                  
中小企業診断士の登録後、本格的に経営コンサルタントとしての活動を開始。
得意な支援ジャンルは、中国市場開拓、越境EC、事業・営業・マーケティング戦略策定、事業計画策定など。

<連載>
第1回
第2回
第3回(本記事)
2018.07.13 13:51 | 固定リンク | 経営ミニコラム
小さな会社が海外販路開拓に取り組むステップ(2/3)
2018.07.06


こんにちは。

宮城県よろず支援拠点コーディネーターの細野です。



「小さな会社が海外販路開拓に取り組むステップ」と題して、海外展開には興味があるけれども、具体的にどういうステップで進めていけばいいかイメージがわからないという方向けに、取り組みのステップを3回に分けてご紹介しております。


第1回目は、事前準備。


第2回目(今回)は、国内取引を通じて海外に商品を売る。


第3回目は、直接、海外の取引先に商品を売る。


・・・といった流れとなります。


では、さっそく本題に入ります。


今回からはいよいよ具体的な販売方法についてご紹介していきます。



まずは、国内取引を通じて海外に商品を売る方法についてです。
海外へ販売するのに国内取引?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。



ただ、これまで全く海外取引の経験が無い会社がいきなり直接海外取引を行うのはハードルが高いです。
少なくとも以下については満たせていないと直接海外取引は厳しいでしょう。




・英語力(高校1~2年生レベル)
貿易書類作成、相手企業等のコミュニケーションを行うために英語力を持った人材が必要です。


・国際物流
海外に物を送る際の手続きや書類、具体的な方法を理解している必要があります。


・海外での決済方法
海外企業と取引する際の決済方法を理解している必要があります。


・リスクヘッジ方法

海外取引を行う際は保険や契約書を活用したリスクヘッジが必要であり、状況に応じた適切な手段の選定が必要です。


他にも色々ありますが、まずはこの辺りの体制やノウハウ獲得ができるまでは、国内取引を通じた海外向け販売を行っていった方がよいでしょう。



では、具体的にどうすればよいかということですが、一言で言ってしまうと、自社の商品を海外へ輸出してくれる輸出会社や商社等を探すことです。

この探し方については大きく分けて以下の2つです。

1.展示会への出展

展示会は効果的に活用すれば短期間で多くの見込み客を集められる手段です。

上手くいけば数日で数十件以上の見込み客リストが作れるでしょう。

国や自治体等の補助を活用すれば、無料~数万円程度で参加できることが多いです。

日本国内の展示会には、新たな商材を探している輸出会社や商社等が多数訪問します。

それらの会社に対し、自社の商品を紹介するわけですが、海外輸出に興味があり、輸出会社や商社等との商談を望んでいることを出展社名簿やブース等でPRするとよいでしょう。

ただし、展示会出展は費用と人手がかかるうえに、かなりノウハウが必要です。ただ出展するだけでは成果は出ないと考えてください。入念な準備を行った上で臨む必要があります。



2.訪問営業
これは通常の国内営業と同じです。

自社の商材を取り扱っている輸出会社や商社等をリストアップして、それぞれに対してアポイントを取って訪問営業します。


輸出会社や商社等にとっては、自社の商品ラインナップが増えることは大歓迎ですので、商談に必要な資料を準備し、取扱い商材のジャンルが外れていなければ、邪険に扱われることはあまりないはずです。


訪問先のリストアップ方法としては、インターネットで探す、ビジネスマッチングサイト(JETROのTTPP等)を使う、人から紹介してもらうなどありますが、基本的には地道な取り組みが必要となります。
ただ、国内の会社が相手ですので、日本語でコミュニケーションが取れるのは、直接取引と比べて楽な部分です。



1点注意点です。

探しに行く前に、前回エントリーで書いた事前準備をしっかり行っておいてください。事前準備無しで取引先探しをしても、必要な情報が不足していると商談にならず、無駄足になってしまいます。ご注意ください。


国内取引を通じて海外に商品を売ることに慣れてきて、直接取引を行えるだけの社内体制が出来てきたら、次はいよいよ直接海外の取引先に商品を売ることを考えていきましょう。

そのあたりは次回ご紹介していきます。

お楽しみに!


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宮城県よろず支援拠点と宮城県商工会連合会の主催で海外展開セミナーを開催します!

3名の当拠点コーディネーターが、中小企業、特に小さな企業や個人事業主でもできる海外販路開拓の具体的な方法について事例を交えてお話します。

セミナータイトルは以下の通りです。

1.「海外展開を進めやすいのは、こんな企業」(渡邊コーディネーター)

2.「小さな会社でもできる海外販路開拓」(細野コーディネーター)

3.「次はベトナム、カンボジア!~食品輸出をする前にするべきこと~」(田中コーディネーター)

※内容については変更になる場合がございます。

開催日・場所は以下の通りです。
日時:7月26日(木) 13:00~15:00(受付12:30~)
会場:TKPガーデンシティPREMIUM仙台西口 ホール8A



お申込みは当拠点ホームページから!
http://www.yorozu.miyagi-fsci.or.jp/pdf/overseas.pdf


またはお電話でも承っております。(TEL:022-393-8044)

<筆者紹介>
細野 哲平(ほその てっぺい)。中小企業診断士。経営コンサルタント。

仙台・宮城を中心に、「会社の将来をとことん一緒に考える身近な経営パートナー」として、徹底的に社長の立場に立った経営コンサルティングを行っている。

東京のIT企業でWeb系のシステムエンジニアとして多くのシステム開発に携わった後に、中国の北京に約2年間居住して日系企業の中国進出事業に取り組む。
                  
中小企業診断士の登録後、本格的に経営コンサルタントとしての活動を開始。
得意な支援ジャンルは、中国市場開拓、越境EC、事業・営業・マーケティング戦略策定、事業計画策定など。

<連載>
第1回
第2回
第3回

2018.07.06 17:00 | 固定リンク | 経営ミニコラム
小さな会社が海外販路開拓に取り組むステップ(1/3)
2018.06.29


おはようございます。

宮城県よろず支援拠点コーディネーターの細野です。



今回から3回に渡って、私の方で経営ミニコラムを担当いたします。



今回のテーマは「小さな会社が海外販路開拓に取り組むステップ」と題して、海外展開には興味があるけれども、具体的にどういうステップで進めていけばいいかイメージがわからないという方向けに、取り組みのステップを3回に分けてご紹介していきます。



第1回目(今回)は、事前準備。


第2回目は、国内取引を通じて海外に商品を売る。


第3回目は、直接、海外の取引先に商品を売る。



・・・といった流れとなります。





■海外展開する際に事前準備すべきこととは?

では、さっそく本題に入ります。


今回は事前準備ということで、「売りに行く前に考えるべきこと」と、「売りに行く前に最低限準備すべきもの」をご紹介します。

まずは、「売りに行く前に考えるべきこと」です。


何も考えずに売りに行く方はいないと思いますが、最低限この辺りは抑えておいていただきたいというポイントです。


・目的
そもそも何のために海外展開するのか?

会社として取り組む意味は何か?

事業全体としての位置付けをどうするか?

こういったことを明確にしてください。

この目的次第で、この後の取り組み方が変わってくるはずです。



・市場の状況
類似商品にはどんなものがあるか?

競合はどんな会社か?また、商品ラインナップはどうなっているか?

類似商品の価格帯はどうか?

自社商品の価格帯が消費者に受け入れられそうか?

自社商品が現地の消費者の嗜好に合うか?



こういったことを調査していきます。




今はインターネットでかなりの範囲まで調べられるようになっていますが、やはり現地に行かないとわからないこともありますので、可能な限り現地に一度は行ってみてください。



・取引条件
ここでの取引条件とは、輸送や保険の費用分担、納期、輸送方法、支払いタイミングのことです。これらが決まっていないと、そもそも商談が成り立ちません。

確定はできないとしても、自社としての方針はもっておくようにしておきたいところです。



・事業計画
誰がいつ何をやるのか、売上や費用の見込みはどうか、いつまでに黒字化させるか、いつまでに投資を回収するか、想定リスクとその対策・・・こういったことを盛り込んだ事業計画を策定します。




次に「売りに行く前に最低限準備すべきもの」です。


商品サンプルだけ持って行って商談に臨むことがないようご注意ください。



・会社案内
簡単なものでよいです。少なくとも初期段階では商談相手はあまり会社そのものには興味が無く、商品のPRの方が重要です。

ですので、会社案内としては、会社の基本情報と主力取扱商品の紹介程度でよいでしょう。

現地の言葉で書かれたものがあればベストですが、最低でも英語のものを用意してください。





・商品資料
商品ごとの説明資料です。単に仕様(スペック)を説明しただけではなく、商品コンセプト、類似品との差別化要素、使い方、売り方など相手にPRすることを意識した資料にしてください。

これも現地の言葉で書かれたものがあればベストですが、最低でも英語のものを用意してください。



・価格シート
取扱商品の価格表です。

通常の国内卸価格、いわゆる工場出し価格だけでは、海外の相手は相手国の物流に明るくないため、取引の判断が難しいです。

最低でも海外向け梱包をして、港や空港までの運賃も含んだ、いわゆるFOBの価格を提示できるようにしてください。







以上が事前準備として行っておいた方がよいことです。


「早く売りに行きたい!」という気持ちが強いと、つい焦っていきなり売り込みに行ってしまいがちですが、そこはぐっとこらえて最低限の事前準備はしていきましょう。



それがかえって、結果としては早く成果に繋がることになります。


次回はいよいよ具体的な販売方法についてご紹介していきます。
お楽しみに!



★★★
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1.「海外展開を進めやすいのは、こんな企業」(渡邊コーディネーター)

2.「小さな会社でもできる海外販路開拓」(細野コーディネーター)

3.「次はベトナム、カンボジア!~食品輸出をする前にするべきこと~」(田中コーディネーター)



※内容については変更になる場合がございます。



開催日・場所は以下の通りです。
日時:7月26日(木) 13:00~15:00(受付12:30~)
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またはお電話でも承っております。(TEL:022-393-8044)




<筆者紹介>
細野 哲平(ほその てっぺい)。中小企業診断士。経営コンサルタント。

仙台・宮城を中心に、「会社の将来をとことん一緒に考える身近な経営パートナー」として、徹底的に社長の立場に立った経営コンサルティングを行っている。

東京のIT企業でWeb系のシステムエンジニアとして多くのシステム開発に携わった後に、中国の北京に約2年間居住して日系企業の中国進出事業に取り組む。
                  
中小企業診断士の登録後、本格的に経営コンサルタントとしての活動を開始。
得意な支援ジャンルは、中国市場開拓、越境EC、事業・営業・マーケティング戦略策定、事業計画策定など。


<連載>
第1回
第2回
第3回
2018.06.29 08:33 | 固定リンク | 経営ミニコラム
シリーズ:なぜ組織が成長するためには適切な「余剰=あそび」が必要なのか?(3/3)
2018.06.24




皆様こんにちは。



宮城県よろず支援拠点コーディネーターの佐藤創です。

今回は「なぜ組織が成長するためには適切な「余剰=あそび」が必要なのか?」というテーマの最終話(3回目)です。



これまで民俗学や生物学から、組織論を俯瞰してきました。

第1回記事
第2回記事



「組織は生き物である」ということは、皆様も感じているところだと思いますが、生き物であるからこそ、実際の民族や生物の知恵または歴史をたどることでヒントを得ることができました。



今回は経営学、特にビジネスモデルの検討に立ち戻ります。



ただし、ややこしい話はしません。収益を上げるためのビジネスモデルをたった2つだけに分類します。

皆様の事業が、このどちらの収益モデルに近いのか、そしてこれから安定的に収益を上げるためにどんな戦略を講じればよいのかを、わかりやすく解説したいと思います。

さて今回も、頭の体操と思ってお付き合いいただけますと幸いです。





■たった2つの収益モデル

みなさまの会社で行っている事業は、ほぼこの2つのどちらかの収益モデルに当てはまると思います。



1つが、狩猟採集民族型の事業である「フロー型事業」です。

もう1つが、農耕民族型の事業である「ストック型事業」です。



狩猟採集型と農耕型の特徴は、第一回のコラムで解説した通りなのですでにご存じかと思います。収益を上げるための方法論が大きく異なっているので、以下に整理した図を掲載します。





フロー型、つまり狩猟採集型事業の特徴は、商談当たりは大きな売り上げを獲得できるのですが、お客様から継続的な売り上げを獲得しにくいので、次の別のお客様の獲得のために次々と営業をし続ける必要がある点です。

顧客が蓄積しにくいので、顧客が流れ続ける(=フロー)という意味です。



ストック型、つまり農耕型事業の特徴は、1商談あたりの売り上げは少ないのですが、お客様から継続的なリピートオーダや月額売り上げを頂けるので、一度獲得したお客様が蓄積する(=ストック)という点です。



この2つの事業は、営業スタイルも異なりますし、商品の特徴も異なります。となれば、組織の形状も異なってきます。以下に主な違いをまとめているので参照ください。







■ストック型事業を構築するメリットは?

さて本論における私の結論は、

ストック型事業を構築することで、経営が安定し、経営の高度化が達成できる

ということです。

この結論は、第1話の民俗学での考察結果より自明であると考えています。単なる持論ではなく、歴史が検証した結果を踏まえた結論と考えています。



フロー型事業だけでは、営業を止めたとたんに売り上げが途絶えるようなリスクをはらんでいます。

従業員が急に退職したり、人手不足で営業が展開できない、などといった経営リスクに対し、弱さを持っている事業といえます。



フロー型事業が好調なうちに、ぜひ事業のストック化を考えてみてほしいと思っています。




ストック型事業のメリットは以下です。


  • 毎月定期的な売り上げが立つので、キャッシュフローが安定する。

  • 売り上げ予測・計画が立てやすくなり、将来の事業計画を確度高く策定できるようになる。

  • 売り上げを直接生み出すライン部門以外の高度管理部門を養えるようになる(=経営の高度化)。



結果的にキャッシュフローが安定することで経営の安全性が高まり、事業基盤がしっかりとします。



ストック型事業とは具体的にどんなものがあるのか、その点について以下のスライドで確認してみてください。







ところで、



「フロー型事業をストック型事業にする方法なんてあるのか?」



と感じられるかもしれません。





ただ、それは可能です。

もちろん、一足飛びにストック化することはできませんが、徐々にストック型の事業展開をしかけることが可能なのです。

どの業種でも、考え方をちょっと変えれば、ストック事業化へのヒントは見つかります。






■事業のストック化へのヒント

ストック型事業の最も大きな特徴は、

  同一顧客からの継続的かつ安定的な購買がある

という点です。



例えば家や車など、同一顧客から継続的に同じ商品の購入がほとんどない事業を考えます。

確かに家や車は何度も何度も購入しないですが、その家や車を使う利用シーンを考えてみてください。何が必要になるでしょうか?



そうです、メンテナンスや万一に備えた保険です。

これらのニーズは必ず発生します。



なので、家の引き渡し後も定期的なメンテナンスを行うサービスを有料で提供したり、自動車保険の契約を勧めることで、継続的な売り上げ確保が可能になります。

アフターマーケット(保守・点検・保険など)で事業をストック化するのがオーソドックスな方法の1つです。




もう1つの、ストック化するためのオーソドックスな方法は、顧客の状態をだんだんと改善するため、継続的に商品・サービスを提供するという方法です。



簡単に言うと、健康食品やスポーツジムです。

健康食品は、顧客の健康を継続的に改善するために商品を毎月購入していただくというビジネスモデルです。継続して利用することが前提なので、ストック型事業に該当します。



スポーツジムも、顧客の体形や体重、健康などを将来的に改善するため、継続利用をさせるビジネスモデルです。



これを当てはめられないか検討すると結構面白いサービスが出来上がります。




例えば、インテリア用品やインテリア雑貨などを販売する小売店で、このモデルを取り入れられないか考えてみましょう。

考えやすくするために、具体的なブランドでいうと、例えば「Francfranc」のようなお店を想定してみてください。

こういった小売店で顧客の状態を継続的に改善するビジネスモデルを成り立たせるには、どのように組み立てればいいでしょうか?




アイディアの1つとしては、顧客のお部屋やリビングに合ったインテリアや雑貨を、毎月毎月ちょっとずつ購入していただくことで、半年後や1年後にはお部屋がお客様の望むテイストに生まれ変わる、といったサービス提供が考えられます。



もちろんお客さんにお金があれば一度にインテリアを買い揃えられますが、それは負担が大きくなります。

なので、例えば毎月定額の5,000円コース、10,000円コースなどを決めて、その金額の範囲内で必要なインテリアや雑貨をちょっとずつ買い足していくというサービスです。



で、そこへコンサルティング・サービスも付加してみましょう。

自社商品に詳しい店員さんが、お客様が撮ってきた写真や動画を見ながら、どこをまずは改善していくと雰囲気が良くなるか、といったアドバイスします。



雑貨はちょっと変えるだけでも部屋の雰囲気をがらっと変えられる力を持っています。

それを目利きの店員がコンサルティングするのです。



そうすると、最初の月はまず雑貨で部屋全体の雰囲気を変えられる提案をし、3か月目には椅子やテーブルといったちょっと高額の提案をするなど、顧客の部屋の状態に応じたアイテムを勧めることも可能になります。



お客さんも、日々変わっていく部屋にワクワクしますし、変わっていく部屋を友人にも見せていっしょに楽しむこともできます。

友人たちも、部屋が変わっていく状態を見ていけば、自分もそうしたい、と思うようになりますので、口コミ効果やSNS拡散がしやすくサービスが一気に広まる可能性もあります。

といったように、半年後や1年後を目指したこのような継続改善サービスを提供することが考えられます。

お客様も1つの部屋が終わったら次の部屋、、、と、さらなる継続購買に結び付く可能性も十分考えられます。




以上の様に、フロー型事業をストック化するためのヒントはたくさんあります。

少しでも継続的な売上確保が可能になるストック型事業を手掛け、経営の安定化を目指してみてください。



よろず支援拠点にお越しいただければ、こうした具体的なアイディアを一緒に検討することができますので、ぜひお気軽にお声がけください!



<筆者紹介>
佐藤 創(さとう そう)。中小企業診断士、および高度情報処理技術者、キャリアコンサルタント。

「変化を求め明日を企てる事業者様の良き参謀役」として、ビジョン実現に向け経営者と伴走しながら共に汗をかく、ハンズオンでの支援を身上とする。独自のビジネスモデル分析による経営改善手法が好評。

得意な支援ジャンルは、新規事業開発・事業戦略による売上拡大、IT導入・活用による生産性向上および販路開拓、金融支援(リスケ等)を伴う経営改善・事業再生。



<連載記事>シリーズ:なぜ組織が成長するためには適切な「余剰=あそび」が必要なのか?

第1回記事
第2回記事
第3回記事(本記事)
2018.06.24 09:29 | 固定リンク | 経営ミニコラム
シリーズ:なぜ組織が成長するためには適切な「余剰=あそび」が必要なのか?(2/3)
2018.06.14


おはようございます。

宮城県よろず支援拠点コーディネーターの佐藤創です。




前回に引き続き、「なぜ組織が成長するためには適切な「余剰=あそび」が必要なのか?」と題して、適切な余剰が経営に与える影響を探っていきます。

<参考>
第一回記事はこちら



前回は、余裕がなさすぎる事で組織の長期的な成長のための活動ができなくなり、組織の高度化が遅れてしまう可能性について「民俗学」から探っていきました。




2回目の今回は「生物学」から探っていきます。




生物学や遺伝学、動物行動学を紐解くと、我々の常識では考えられないような方法で、種を残存させようとする生物がたくさんいることに気づきます。




「種を残す」ことは、つまるところ「組織を残す」=「組織を存続させる」ことと同義だと思っています。




生物界のいろんな生き物が、どのように創意工夫し、また差別化して種を残そうとしているのか、その点から「組織論」を考察してみましょう。




さて今回も、頭の体操と思ってお付き合いいただけますと幸いです。










■自然淘汰を考える

生物学、特に動物行動学(および遺伝学)では、ヒトも含め「自己の遺伝子を残す」ことを最優先に進化をしてきました。


(参考文献:リチャード・ドーキンス,利己的な遺伝子,紀伊國屋書店,2006年)




環境に適応できた種は遺伝子を残し、適応できなかった種は遺伝子を残せない。
よって、自然淘汰によって環境に適応した遺伝子のみが残っていき、その種は栄える、というのが、チャールズ・ダーウィンが論文「種の起源」で提唱した自然選択説です。

(参考文献:チャールズ・ダーウィン,種の起源)




これは生物界だけでなく、経済界でも同じことが言えるのではないかと思っています。




現在の環境に適した企業や組織はますます栄え、適さなかった企業や組織は衰退する。

私はまさに自然選択説が経済界でもそのまま機能しているように思えてなりません。




こうした意味でも、いろんな生物がどのように種を残そうと企てているのか、その仕組みを見ることは、そのまま経済界での生き残りのヒントをくれているように思います。






■有性生殖はなぜ存在するのか?

さてここで、根本的な問いをしてみたいと思います。




ヒトも含め、なぜ男と女、つまりオスとメスが存在するのでしょうか?




なぜ生物は有性生殖によって子孫を残そうとするのでしょうか?




わかりますか? ちょっと考えてみてください。



















答えは、




「遺伝子を“かき混ぜる”ことによって、多様な特性を持つ子孫を残し、自然環境の変化に適応するため」




なのです。







みなさんが想像したであろう?ロマンチックな答えでなくてすみません。




皆様ご存知の通り、有性生殖によって、子供は父親と母親の半分ずつの遺伝子を持ちます。




もし仮に、父親の遺伝子に決定的な欠陥があり、長く生きられないとします。
その場合、もし父親の遺伝子を子供が100%引き継いだのならば、父親と同じく長くは生きられず、その種は相対的に生命力が低いので、やがては絶滅する可能性が高くなります。




そこで母親の遺伝子を半分もらうことで、遺伝子を文字通り「かき混ぜる」ことにより、多様な特性を持つ子孫を残すわけです。




ただし半分ずつなので、急激な変化は起こりません。現在の環境にある程度適した遺伝子を持ちつつ、長期的には多様な自然環境に適応できる遺伝子を持てるようになります。




生物はこうして遺伝子をかき混ぜることで、自然環境の変化に適応するような仕組みを構築してきました。




もし、今の環境に適した遺伝子だからと言って、その遺伝子を100%残すような生物がいたのなら、外部環境の変化が発生したときに、その生物は耐えられず一気に絶滅することになります。




生物界における余剰とは、この遺伝子の多様性のことと言えるでしょう。




多様な遺伝子を持つ種が存在するからこそ、多様な環境にも適応できるのです。




現在の環境だけに適した種がいればいい、という近視眼的な視点では、長期的な種の繁栄は絶対にのぞめないのです。




これは生物界における自然淘汰を生き抜くための生物の知恵であり、普遍的な真実といえます。










■会社に当てはめ考えてみよう

この考え方は、そのまま組織運営にあてはめることができます。



現在の仕事を回すだけの人員体制を構築したり、現在の仕事に求められるスキルだけを獲得した組織を考えてみてください。



今の経済環境や仕事環境が続く限りは問題ないように見えますが、いったん受注が激減するなどの外部環境変化が起こった場合、そのような危機に対応できる人材やスキルを保有していないため、一気に経営が悪化します。



こうした危機に力を発揮する人材がいればいいのですが、多様な人材やスキルを推奨せず、単一の人材やスキルを推奨してきたことにより、環境変化や危機対応ができません。




結果的にその組織は弱体化し、自然淘汰されることになります。







以上から、組織が長期的に存続するためには、多様な価値観やスキル、経験を持つ人材を確保し、外部環境変化に適応できるしなやかな組織体制を構築することが必須だといえます。



今すぐに必要とはされていない技術やスキル、事業に着手することは、こうした多様性を確保し、柔軟な組織に変革するためには必要なことなのです。







蛇足ですが、ミジンコは面白い生態を持っています。

ミジンコは水たまりや池などに生息していますが、環境変化の少ない安全な状態では、メスしか存在しません

メスが自分の遺伝子の100%を持つクローン(メス)を生むことで、現在の環境に適した遺伝子だけを持つミジンコで生活をします。




しかし、いったん水が濁ったり有毒成分が混入したりするなど、外部環境の変化が発生した時には、なんとオスが生まれてきます。




そして有性生殖を行うことで遺伝子をかき混ぜ、外部環境の変化に耐えられる種を生み出そうとするのです。




このようにして 多様性 = 余剰 を作ることで、外部環境の変化に適応しようとするのです。







いかがでしたでしょうか。

ミジンコからも、組織の普遍的な存続のためのヒントを得られたのではないでしょうか?




今の環境に適した人員だけを抱えることのリスク、今必要な技術だけを取得することのリスクを、生物学から感じ取っていただけたのではないかと思います。




前向きな余剰は組織の伸びしろであり、かつ危機管理能力の一翼を担うものでもあります。

今だけでなく、ちょっと先を見越して事業計画および人材戦略を練ってみるのも楽しいですね。




さて最終回の次回は、経営学に立ち戻り、経営に余剰をもたらすストックビジネスを構築するためのヒントを探っていきます。

次回もお楽しみに!



<筆者紹介>
佐藤 創(さとう そう)。中小企業診断士、および高度情報処理技術者、キャリアコンサルタント。

「変化を求め明日を企てる事業者様の良き参謀役」として、ビジョン実現に向け経営者と伴走しながら共に汗をかく、ハンズオンでの支援を身上とする。独自のビジネスモデル分析による経営改善手法が好評。

得意な支援ジャンルは、新規事業開発・事業戦略による売上拡大、IT導入・活用による生産性向上および販路開拓、金融支援(リスケ等)を伴う経営改善・事業再生。



<連載記事>シリーズ:なぜ組織が成長するためには適切な「余剰=あそび」が必要なのか?

第1回記事
第2回記事
第3回記事
2018.06.14 22:28 | 固定リンク | 経営ミニコラム
シリーズ:なぜ組織が成長するためには適切な「余剰=あそび」が必要なのか?(1/3)
2018.06.08





おはようございます。

宮城県よろず支援拠点コーディネーターの佐藤創です。

今回から掲題のテーマで、3回にわたりミニコラムを発信いたします。ミニコラムは毎週金曜日にお届けします。




さて、みなさまは現在の人手不足もあり、中小企業では朝から晩までフル稼働の状況ではないでしょうか?

目の前の作業に追われ、気が付いたら定時を過ぎ、そこから残務処理を始める、、、なんてことも多いと思います。




忙しいのは良いことですが、一方で余裕がなさすぎる事の弊害は発生していませんか?




それは、「余裕がなくなることで組織の長期的な成長のための活動ができなくなる」ということです。

分かりやすく言うと「組織の成長が阻害される恐れがある」ということです。




それはなぜなのでしょうか?


これから3回にわたり、いろんな角度からちょっとひも解いていきましょう。
頭の体操と思ってお付き合いいただけますと幸いです。






■人類の発展過程に見る「余剰」の効果


余裕とは、経営における「余剰」、つまり「あそび」と言えるでしょう。

なぜ「余剰」=「あそび」がないと組織が成長しないのでしょうか?




初回は、いったん経営学を離れ、「民族学」、つまり人類の発展過程から「余剰の効果」を探ってみます。

おそらく興味深い事実が浮き彫りになるかと思います。



人類の発展過程は、実は組織の発展過程にもそのまま当てはめることができます。

いわゆる歴史から学ぶということです。


さて、内容に移りますが、過去にポリネシア地域において、距離的にはかなり近いにも関わらず、まったく異なった社会構造を持つに至った2つ部族がありました。

(参考文献:銃・病原菌・鉄、ジャレド・ダイヤモンド、草思社、2012年)


この2つの部族はその後戦争を起こしますが、一方の部族がもう一方の部族を圧倒して制圧することになります。






一方は、やや寒冷な地域だったため農耕があまり発達せず、主に狩りを行って食糧を確保する狩猟採集民族です。狩猟を行うため1人1人の狩りのスキルは高く、腕っぷしも強いです。


もう一方は温暖な地域にいたため農耕が発達した農耕民族です。農業に従事している人の狩りや戦闘能力は低く、温厚な民族です。


狩猟採集民族 VS 農耕民族というわけです。


どちらが圧勝すると思いますか?










結果は、圧倒的に農耕民族なのです。


理由はこうです。



農業に従事する事の最大のメリットは、食料を備蓄することができるという点です。
備蓄をするので食糧に 余剰=あそび ができます。


すると、食糧生産だけに全人口が従事する必要がなくなるので、装飾品などのモノづくりをする職人が生まれたり、武器職人が生まれたり、政治家が生まれたり、職業軍人が生まれたりして、社会全体が高度化していきます。



一方、狩猟採集民族は食料の備蓄がしにくいため、食糧の確保にほとんどの人手が取られてしまい、政治家や職業軍人が生まれにくくなりました。


そのかわり、限りある食料を分配するしくみ(今でいう社会保障でしょうか)が発達します。



歴史は残酷で、これら両部族が戦争を起こし、最終的には農耕民族が、狩猟採集民族を圧倒します。

職業軍人や政治家のいる組織立った民族が、狩猟採集民族を圧倒するという事実は、世界の歴史で何度も何度も繰り返されます。


現在も世界の各地で狩猟採集民族が少数存在していますが、彼らのなかで高度な文化と経済を持っている民族は1つもありません


これは世界の歴史で証明されている事実であり、不可逆的な真実でもあります。











■会社における余剰

会社に置き換えて考えてみましょう。


すべては、「食べるために働くという人の占有率」で決まります。




「食べるために働く人の占有率」が高い組織とは、全員がフル活動して売り上げを計上しないと組織が成立しない会社です。


朝から晩まで働きますが、備蓄(余剰)がないため、永遠に食料(売上)を求めて働きます。狩猟採集型の会社といえるでしょう。


営業で飛び回って案件を獲得し、ほっとするのもつかの間で、また次の営業案件の獲得に飛んでいく、、、組織全員がこのような状態の会社は典型的な狩猟採集型の会社です。






一方、「食べるために働く人の占有率」が一定程度の割合の組織とは、経営戦略や事業企画、マネジメントなどの高度化を担う人材が存在する会社です。


こうした直接売上を生まない高度人材を抱えられるのは、食料の余剰があるからです。これは農耕型の会社といえます。


特定事業領域で専門性を持ち、安定した顧客基盤を抱えるなどし、安定したキャッシュフローを生み出すことができると、経営基盤も安定します。


そして高度人材を抱えることで、人の集まり ⇒ 組織 へとグレードアップし、経営の高度化が実現します。







■あなたの会社は狩猟採集型?農耕型?




もちろん、現実のビジネスの世界ではどちらかが一方的に良いということはありません。

ただしスタッフ部門や経営意思決定を行える高度人材を抱えているかどうかは、経営の高度化の度合いに大きな影響を及ぼします。




経営が高度化することで、大きな事業戦略を描くこともできるようになります。

そういった視点からすると、「全員が忙しく営業に駆け回っている」のは、一方的に手放しで喜べる状況でもないのです。







狩猟採集型の事業とは、分かりやすく言うと自動車販売のような事業を言います。

何度も顧客にアプローチをして、販売額の大きい案件を受注することを目指します。大きな売上が立つのですが、だからといって営業の手を緩めることはできません。また次の案件を獲得すべく、営業を行うような、そんな事業です。







農耕型の事業とは、分かりやすく言うと新聞販売のような事業を言います。

新聞記事を書くための大がかりな体制、また印刷・配達などの全国的なインフラを整備して、初めて消費者に新聞を届けることができます。

購読者が増えて損益分岐点を超えれば、長期にわたり安定的な収益を得ることができますが、損益分岐点を上回るまでに長い時間と、大きな投資が必要になります。

まさに「農地を耕す」ことから始める事業です。




これら狩猟採集型事業と、農耕型事業は、共にメリット・デメリットがあります。

特に、創業したばかりの企業や、事業基盤がしっかりしていない企業が農耕型事業に手を出すことはNGです。

黒字化するまでに長い時間がかかり、また財務面でも負担が大きいからです。







だからといって、いつまでも狩猟採集型の事業ばかりやっていては、経営の安定化が図れません。

このバランスを取ることが重要ですし、如何に既存の狩猟採集型事業から、部分的にでも農耕型事業に転換していくか、そのテクニカルな経営判断も求められます。




このあたりの、「狩猟採集型事業から、部分的にでも農耕型事業へと転換するノウハウ」については、私がよろず支援拠点で行っているミニセミナー(~入るを量り出ずるを制す~利益を確保する 「勝つため」 のビジネスモデル活用術)で詳しく解説していますので、ご興味があれば参加ください。







今風に言うと、ストックビジネス=農耕型事業 という言い方ができます。




さて、次回は「生物学」における、組織的な余剰の効果 を解説いたします。

最後の3回目では、「経営学」に立ち戻り、ストックビジネス=農耕型事業 構築のための具体的なヒントをお届けしたいと思いますので、お楽しみにしてください!




最後まで読んでいただきありがとうございました。

※ストックビジネス構築の個別ご相談も、よろず支援拠点で受け付けますので、ぜひご連絡くださいませ。



<筆者紹介>
佐藤 創(さとう そう)。中小企業診断士、および高度情報処理技術者、キャリアコンサルタント。

「変化を求め明日を企てる事業者様の良き参謀役」として、ビジョン実現に向け経営者と伴走しながら共に汗をかく、ハンズオンでの支援を身上とする。独自のビジネスモデル分析による経営改善手法が好評。

得意な支援ジャンルは、新規事業開発・事業戦略による売上拡大、IT導入・活用による生産性向上および販路開拓、金融支援(リスケ等)を伴う経営改善・事業再生。



<連載記事>シリーズ:なぜ組織が成長するためには適切な「余剰=あそび」が必要なのか?

第1回記事
第2回記事
第3回記事
平成29年度補正 IT導入補助金の公募要領を読み解く
2018.04.19

■IT導入補助金の公募要領が公開されました


コーディネーターの佐藤創です。
4月20日の公募開始に先立ち、公募要領が公開されています。

中身をざっと見ますと昨年度との違いがちらほらと、、、、


そこで、昨年度との違いを、気になる加点対象などを交えて速報ベースで以下にお伝えします!

(※以下文章は、宮城県よろず支援拠点  佐藤創コーディネーターの私見です。

  また速報ベースの情報であり、誤解等が含まれている可能性もありますのでご了承ください)





■公募要領を読んだ全体的な結論


結論は、

  • 申請のためにしっかりと事業計画を策定することが求められている

  • 加点対象の要素はあまり多くない

  • 結論として、事業計画の内容の勝負になりそう


というところです。

では、個別に違いなど見ていきましょう。







■申請するために必須の追加要素


昨年と異なる点で、申請に必須の追加要素です。

  1. 独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)の「SECURITY ACTION」の「★ 一つ星」または「★★ 二つ星」の宣言が必須

  2. 補助金交付申請内容について「IT導入支援事業者を含む”第三者”による総括的な確認」が必須

  3. 「経営診断ツール」を用いた分析が必須



1.については、中小企業が自ら情報セキュリティに取り組むことを宣言するもので、事業者が自ら「宣言」するものであり、IPAからの認定を必要としません。以下のWebサイトから宣言すればOKと思われます。
 
 SECURITY ACTION




2.については、前年度はよろず支援拠点や専門家のチェックがあると加点対象になっていましたが、本年度からは「チェックが必須」になりました。よろず支援拠点でも対応可能ですので、引き続きご相談ください。




3.については、「経営診断ツール」を使って診断結果を登録申請する流れが発生します。診断ツールの正体は明確ではありませんが、公募要領を読むと、経産省で活用を促進しているローカルベンチマークと内容が同じなので、これのことを示していると思います。

 ローカルベンチマーク







■加点対象について



昨年と異なる点で、加点対象についてです。


  1. 生産性向上特別措置法に基づき、固定資産税の特例率をゼロとする意向を表明した自治体に所属していること

  2. 地域未来投資促進法の地域経済牽引事業計画の承認を取得していること

  3. 「地域未来牽引企業」であること

  4. 「おもてなし規格認証2018」もしくは、「おもてなし規格認証2017の金・紺・紫認証」を取得していること

  5. 経営力向上計画は加点対象から外れました



1.については、ものづくり補助金や持続化補助金にも関連しているのですが、先端設備導入計画が認定されると、固定資産税がゼロ(または減額)される自治体に会社が所属しているかどうかだけが対象になるようです。

本来は先端設備導入計画を事業者が作成して申請⇒認定されないと固定資産税が減額にならないのですが、自治体に所属しているだけでよいとのこと、、、

ちょっとこれは宣言をしていない自治体が事業者からかなり冷たい目で見られそうな加点要素かと思います。ここまでするということは、国が各自治体に固定資産税の特例率をゼロにすることをかなり推奨していることが伺えます。




2.については、宮城県の場合以下リンクを参照してほしいのですが、ここで記載されている事業に関連する事業者が対象になります。ざっと見ると、電子部品や、コンパクトカー等の製造に従事しているか、農林水産・食品関連産業分野に従事している事業者が対象になるようです。

  宮城県 地域未来投資促進法




3.は以下経産省のサイトから地域未来牽引企業に選定されている事業者の場合加点されるようです。

  経産省地域未来牽引企業




4.は昨年度と類似なので、以下リンクを見て下さい。

  おもてなし規格認証




5.経営力向上計画が加点対象外になってしまっています。残念です、、







■そして結論


申請のために第三者のチェックを必須にしたり、経営分析ツールでの分析を必須にするなど、事業計画の内容をしっかりと記載させるための措置が盛り込まれています。

そして加点要素はあまり多くないことがわかりますから、結論としては「事業計画の内容勝負」になるのではないかと想定されます。
2018.04.19 20:26 | 固定リンク | 経営ミニコラム

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