財務分析とは ~苦手意識がある人ほど見て欲しい~
2018.11.07


皆さんこんにちは!宮城県よろず支援拠点コーディネーターの鯨井文太郎です。
前回に引き続き、今回もコラムを担当致します。

前回のコラムでは、経営資源の観点から見たおカネの位置づけについて考えてみました。そして、「おカネには、ヒト、モノ、情報といった他の経営資源を支え、充実させる役割もある」といった趣旨のお話をしました。

今回は、経営指標について考えてみたいと思います。特に財務に苦手意識を持つ、中小企業経営者の方に見て欲しいっ!と考えています。

面白いアンケートがあります。週刊ダイヤモンド2018年3月3日号で日本を代表する企業100社以上に対して以下のようなアンケートを実施しています。

Q.会社経営の上で重要だと考える指標を三つまで上げて下さい 

これに対する回答ベスト10は次の通りとなります。
1位:ROE(33件) 
2位:営業利益(23件) 
3位:フリーキャッシュフロー(22件)
4位:当期純利益(19件) 
5位:売上高営業利益率(18件)
6位:売上高(13件)
7位:ROA(12件) 
7位:自己資本比率(12件) 
9位:経常利益(10件)
10位:ROIC(7件)

1位のROEは投資家が重要視する指標でもあるので、中小企業の場合は相対的に重要度が下がります。それ以外の指標については、ROICなど一部を除いて、財務に苦手意識がある方でも、経営者であれば、聞いたことがある指標の方が多いのではないでしょうか。

以上のことから、自社の分析を行う際、それほど細かな財務指標を抑えなくても、要点を抑えることは十分可能なのではないでしょうか。何しろ、日本を代表する企業のアンケート結果が上記の通りなのですから。
但し、上記の指標は収益面に関する評価を行う指標が多いです。この他にも効率性や生産性などを図る指標があります。これらの指標を踏まえたうえで、総合的に財務分析を行いたい場合は、是非当拠点へお越し下さい。


 さて、ここからは、財務分析の考え方について少しだけお話したいと思います。
 財務分析は「比較する」ということが重要です。例えば
 ①去年の自社と比較する
 ②同業他社(の平均値)と比較する
 ③自社内の部門間や店舗間で比較する
 などが挙げられます。

 また、比較する期間も
 ①昨年度と今年度を比較する
 ②先月と今月を比較する
 ③前年同月と比較する
 などの方法があります。

 これらを踏まえたうえで、様々な角度から比較分析してみることをお勧め致します。


 今回は、財務分析についてお話させて頂きました。

 ここまでご覧いただきましてありがとうございました。

鯨井がお伝え致しました。

<筆者紹介>
鯨井文太郎。宮城県よろず支援拠点コーディネーター、中小企業診断士、金融検定協会認定ターンアラウンドマネージャー、金融検定協会認定事業承継マネージャー。

2018.11.07 08:47 | 固定リンク | 経営ミニコラム
おカネとは~経営資源の観点から考えてみる~
2018.10.30


皆さんこんにちは!宮城県よろず支援拠点コーディネーターの鯨井文太郎です。

突然ですが、皆さん経営資源という言葉を聞いたことありますか?経営資源とは、企業が企業を経営する為の欠かせない要素です。「ヒト、モノ、カネ、情報」という4つの言葉で示されることが多いです。

では、この4つの経営資源の中で企業が経営する為に、最も重要な資源はなんでしょうか?順番を付けるのは難しい、と感じられる方も多いのではないでしょうか。


では、この4つの経営資源の中で、おカネってどういう位置づけなのでしょうか?

 当コラムでは、他の経営資源との関連を踏まえたうえで、おカネついて考えてみたいと思います。

 先ほどの「4つの経営資源の中で、おカネってどういう位置づけなのでしょうか?」という問いについてですが、「もしもおカネが無かった場合、他の経営資源はどうなるのか?」という観点で考えてみたいと思います。


 おカネが無くなると、

ヒト:おカネが無ければ、求人や人材育成等が出来なくなる。
モノ:おカネが無ければ、設備投資等が出来なくなる。メンテナンスも出来なくなる。
情報:おカネが無ければ、経営に関する情報が得られなくなる。情報統制もできなくなる。
 
ということになります。従って、おカネが無いと他の経営資源を充実させることが相当困難なことになります。おカネが無いと、企業が経営を行うにあたって、何も始められない、と言っても極論ではないでしょう。

 言い換えると、おカネがあれば、他の経営資源を充実させることに繋げられると言えるのではないでしょうか。




 上の図はヒト、モノ、情報といった経営資源をおカネが下から支えている様子を示した図です。
 おカネが潤沢であれば、これを基盤にヒト、モノ、情報といった他の資源が充実し、且つ相互の経営資源が保管し合う関係になる、というイメージが描けると思います。


 逆に、おカネが不足していると、その他の経営資源を底から支えることができなくなる、ということになります。


ヒト、モノ、情報といった経営資源を支え、充実させる役割が、おカネにはあるのだと筆者は考えています。

 ここまで、企業経営や経営資源の観点から見た、おカネについて、お話しさせて頂きました。

 ご覧いただきまして、ありがとうございました。

鯨井がお伝え致しました。


<筆者紹介>
鯨井文太郎。宮城県よろず支援拠点コーディネーター、中小企業診断士、金融検定協会認定ターンアラウンドマネージャー、金融検定協会認定事業承継マネージャー。
2018.10.30 20:07 | 固定リンク | 経営ミニコラム
会社の未来を数字で予測してみよう(3/3)
2018.10.22


おはようございます。

宮城県よろず支援拠点コーディネーターの細野です。

「会社の未来を数字で予測してみよう」と題して、事業計画策定を行う際に必須となる、将来の売上、経費、利益の予測を立てて数値計画を作ること、つまり” 未来の数字計画作り”のやり方を3回に分けてご紹介しております。

第1回目は、会社の外部と内部の環境分析。
第2回目は、経費計画の作り方。
第3回目(今回)は、売上計画の作り方。
・・・といった流れとなります。

これまでのエントリーでは、将来の売上、経費、利益の予測を立てて数値計画を作ること、” 未来の数字計画作り”のやり方の全体像、環境の変化予測の方法、費用計画の作り方についてご紹介しました。

最終回となる今回は、売上計画の作り方についてご紹介します。


売上計画は、費用計画と比べるとちょっと作りづらいです。

というのも、費用は過去に使うと決めたものだったり、これから使う予定のものだったりと、自社でコントロールできるものがほとんどです。

しかし売上は顧客という相手があって初めて成り立つものですので、予測しづらい部分があるのです。



とはいえ、まったく予想ができないわけではないはずです。

BtoBの業務であれば、まずは手始めに、すでに契約が成立している、もしくは受注確度の高い案件についての見込み数字を入れていきます。


いわゆるストック型(連続型)の売り上げが多い会社であれば、これである程度の売上予測が立つのですが、フロー型(単発型)の売上が多い会社だと、売上見込みが立つのは数カ月程度先までしかないかもしれません。
まだ営業アプローチすらかけていない、存在しない案件の売上などわかるはずがないということですね。

その場合、まずは、過去3~5年程度の推移をみて、ひとまず売上前年比の増減率がそのまま継続するとしていったん数字を入れてみます。

その後、その1で分析した環境分析の内容を踏まえて、数字の増減を調整していくという流れです。
競争環境はどう変わってくるか、お客さんのニーズの変化はどのような影響があるか、自社の生産能力の変化はどうか、自社で今後力を入れていく商品・サービスは何か・・・こういったことを考えながら調整していきます。


また、BtoC、つまり消費者相手の商売の場合も、基本的にフロー型ビジネスの場合のやり方と同じです。

数字の調整部分で簡単な例を挙げると、小売業を営む会社の商圏地域の少子高齢化が特に進んでいるとして、「この高齢者向け商品は売上が増えそうだが、この子供向け商品は逆に売上が減りそうだ」といった感じですね。


このような流れで、ある程度の根拠を持った売上予測が立てられるようになります。

売上計画はあまり精度を求めすぎる必要はありませんし、求めても無駄です。
それよりも、売上予測と実績が異なってきたときに、なぜ予測と違ったのか、いったい何が原因なのか、何が起きているのかということを都度分析することの方が大事です。


これで、費用計画と売上計画が出来上がりました。

ちなみに利益計画ですが、

利益=売上 – 費用なので、

売上計画と費用計画(前回)が出来上がれば、自動的に利益計画は出来上がりますね。


以上で” 未来の数字計画作り”のご紹介は終わりとなります。

この能力を身に着ければ、数字で先を見通せるようになりますので、従業員や金融機関などの関係者を納得させることはもちろん、自分自身も安心して経営していけるようになるはずです。

お読みいただきありがとうございました!


<筆者紹介>
細野哲平。中小企業診断士。宮城県よろず支援拠点コーディネーター。
仙台・宮城を中心に、「会社の将来をとことん一緒に考える身近な経営パートナー」として、徹底的に社長の立場に立った経営コンサルティングを行っている。

東京のIT企業でWeb系のシステムエンジニアとして多くのシステム開発に携わった後に、中国の北京に約2年間居住して日系企業の中国進出事業に取り組む。
2018.10.22 09:11 | 固定リンク | 経営ミニコラム
会社の未来を数字で予測してみよう(2/3)
2018.10.18


おはようございます。

宮城県よろず支援拠点コーディネーターの細野です。

「会社の未来を数字で予測してみよう」と題して、事業計画策定を行う際に必須となる、将来の売上、経費、利益の予測を立てて数値計画を作ること、つまり” 未来の数字計画作り”のやり方を3回に分けてご紹介しております。

第1回目は、会社の外部と内部の環境分析。
第2回目(今回)は、経費計画の作り方。
第3回目は、売上計画の作り方。
・・・といった流れとなります。

前回は、将来の売上、経費、利益の予測を立てて数値計画を作る”未来の数字計画作り”のやり方の全体像と、第一ステップとして行う環境の変化予測の方法についてご紹介しました。

内部環境とミクロの外部環境の変化予測ができたら、ここで得た情報をもとにして、売上、費用、利益といった数値計画に落とし込んでいくことになります。

今回は費用計画の作り方についてご紹介します。


まずは過去3年分程度、決算書をご準備ください。
損益計算書(P/L)の販管費内訳の費目ごとに、3年分の平均を出します。
(必ず3年でなければ駄目ということではありません。大体の目安です)

もし、何か特殊な要因があって、例年と大きく違う部分があれば、そこは取り除いた金額にしてください。


そこで出た金額をベースに、前回行った環境の変化予測の内容を反映させていきます。
たとえば、人が増える計画になっているのであれば、給与や社会保険料など、関連する費用が増えますね。また、定期的な昇給を行っているのであれば、それも反映させましょう。

または、設備投資をするのであれば、減価償却費が増えるでしょう。
オフィスの移転であれば、地代家賃が変わることになるかと思います。


こういった感じで、過去の実績ベースをもとに、変化予測の内容を反映させていくことで、費用計画を作っていきます。

費用に関することは、ほとんど自社でコントロールできることなので、予測を立てるのも、計画を作るのもそんなに難しくないかと思います。


次回(最終回)は、売上と利益の計画の作り方についてご紹介しますのでお楽しみに!



<筆者紹介>
細野哲平。中小企業診断士。宮城県よろず支援拠点コーディネーター。
仙台・宮城を中心に、「会社の将来をとことん一緒に考える身近な経営パートナー」として、徹底的に社長の立場に立った経営コンサルティングを行っている。

東京のIT企業でWeb系のシステムエンジニアとして多くのシステム開発に携わった後に、中国の北京に約2年間居住して日系企業の中国進出事業に取り組む。
2018.10.18 17:13 | 固定リンク | 経営ミニコラム
会社の未来を数字で予測してみよう(1/3)
2018.10.11


おはようございます。

宮城県よろず支援拠点コーディネーターの細野です。
今回から3回に渡って、私の方で経営ミニコラムを担当いたします。


今回のテーマは「会社の未来を数字で予測してみよう」と題して、事業計画策定を行う際に必須となる、将来の売上、経費、利益の予測を立てて数値計画を作ること、つまり”未来の数字のシミュレーション”のやり方を3回に分けてご紹介していきます。


第1回目(今回)は、会社の外部と内部の環境分析。
第2回目は、経費計画の作り方。
第3回目は、売上計画の作り方。
・・・といった流れとなります。



それでは本題に入ります。

さっそくですが、“数値計画作り”と聞いてどんな印象を受けますか?

これまでよろず支援拠点で様々な経営者の方からご相談を受けておりますが、これを苦手とされる経営者の方はかなり多い気がします。

中には「未来のことなんてわからないんだから予想しようがない」とおっしゃる方もいます。



そうはいっても、この”未来の数字計画作り”能力は、経営者が持っておくべき能力の1つといっても過言ではありません。

例えば、自分がその会社で働く従業員であったら、またはお金を出資したり、融資したりしている立場であったら、「将来の数字に関してはわかりません」という社長に対してどう思うでしょうか。

たとえ自分1人で自己資金だけで事業を行っている場合でも、先行きが見えないというのはやはり不安ではないですか?


この” 未来の数字計画作り”は、コツを覚えればそんなに難しいことではありません。



将来の予測というと、10年後の経済動向がどうなっているか、政治や社会環境がどうなっているかなどというマクロ的な環境予測をイメージされる方もいらっしゃるかもしれませんが、それははっきりいって予測するだけ無駄なのでやめましょう。

10年も先の予測などしてもほぼ当たりませんし、中小企業レベルでマクロ環境に影響を受けることはあまりないからです。

個人的な感覚としては、期間は3年程度(長くても5年)が妥当だと思います。
そして予測の対象としては、自分自身や自社といった内部環境、業界や顧客といったミクロな外部環境です。

予測のコツとしては、なるべくほぼ確定している情報を元に予測することです。

たとえば、社長や社員の年齢。これは確実にわかりますね。
もし社長が高齢ならば事業承継を考える必要があるかもしれません。

自社に人材採用計画があるのならば、従業員数の推移もだいたい予測できるでしょう。

それから設備投資や修繕の予定なども、既存設備等の状況を見れば、だいたいいつ頃、投資が必要になるかの予測はできますね。

その他、決まっているイベント、たとえば事務所移転などがあるのであれば、それに付随する費用発生があるでしょう。

こういった内容について、発生時期や内容をメモしておきます。


次に業界や顧客といった外部環境の予測です。
内部環境と違って相手のあることなので、やや予測はしにくい部分はありますが、普段から接していることもあるので、ある程度の将来予想はできるでしょう。

たとえば、お客さんごとに取引が拡大しそうか、縮小しそうか。
お客さんのビジネスの状況がどうなりそうか。新サービスや新たな展開はありそうか。
業界の競争環境はどのように変化しそうか。技術トレンドとしてはどうなりそうか。

こういった感じで、わかる範囲で構わないので、内部環境とミクロの外部環境についての予測を行い、それぞれ内容をメモしておきます。


ここで得た情報をもとにして、売上、費用、利益といった数値計画に落とし込んでいくことになります。

その方法については次回ご紹介しますのでお楽しみに!


<筆者紹介>
細野哲平。中小企業診断士。宮城県よろず支援拠点コーディネーター。
仙台・宮城を中心に、「会社の将来をとことん一緒に考える身近な経営パートナー」として、徹底的に社長の立場に立った経営コンサルティングを行っている。

東京のIT企業でWeb系のシステムエンジニアとして多くのシステム開発に携わった後に、中国の北京に約2年間居住して日系企業の中国進出事業に取り組む。
2018.10.11 19:33 | 固定リンク | 経営ミニコラム
人手不足時代の経営戦略(3/3)
2018.10.08


宮城県よろず支援拠点コーディネーターの佐藤創です。

人手不足時代の経営戦略と題した連続コラムの最終話です。

前回は、日本の外部環境、特に人口構造の変化や労働市場の変化を解説しました。

生産年齢人口はどんどん減少していくので、今後は女性やシニアの活用を図り、人手不足の状況に対応するような経営戦略や人事戦略が必要になってくることがお判りいただけたのではないかと思います。

今回は、企業側でどういった対応をすることで人手不足時代に応じた戦略を描けるのか、その方法論について述べたいと思います。



1.女性活用・シニア活用の事例から読み解く人手不足対応戦略

まずは事例ベースで女性活用・シニア活用で人手不足を乗り越えた事業者さまを見ていきます。



産廃の中間処分業を営む事業者です。ここでは、以前より資格取得を推奨する制度がありました。

たまたまなのですが、女性がこの制度を活用してフォークリフトの資格を取得します。

ただ、経営者は戸惑いました。「フォークリフト業務は男の業務だし、どうしよう。でもひとまずやらせてみるか、、、」

すると、女性でも業務を遂行でき、生産性が向上することがわかりました。


ここで経営者は女性活用にかじを切ります。育児者向けの柔軟なシフト制度を設けるなどして、職場環境を女性が働きやすいように見直します。

その結果、女性のパート従業員の採用・定着が実現し、女性活用による事業規模拡大につながりました。




では、次にシニア活用の事例を見てみましょう。



この会社では、稼働率を高めるため土日も向上を稼働したいと考えていました。ただし、今の正社員は若年層が多く、ここに土日まで働かせると不満が出ると考えました。


そこで経営者はシニア活用にかじを切ります。土日祝日だけ働けるシニアのパート採用を始めたのです。狙いは的中し、シニアの採用ができ、工場全体の稼働率アップが実現できました。

すると思わぬ副産物が得られます。土日祝日だけ働いていたシニア層から、「仕事が面白い、働き甲斐があるので、平日のシフトも入れてもらえないか?」と申し出があります。

平日は難加工を中心に行っていましたが、経営者は作業指示書の文字を拡大するなどし、シニア活用のため業務の見直しを行いました。その結果、平日でもシニアのパート活用が進み、更なる生産性向上やコスト削減効果を得ることができました。




2.事例に共通する「採用活動以外」の経営判断の重要性

以上までの事例を見て気づくことは何かありませんか?



そうです。

「人手不足感」を感じているからと言って、単に今まで通りの求人を出して採用活動しただけでは、決して乗り越えることができなかったということがわかると思います。


なぜなら、、

・女性やシニアの活用をするため、業務の見直しを行い、これまで正社員や男性だけが携わると考えていた仕事を、女性やシニアでも担当できるように変更し、生産性を向上させている

・女性やシニアが働きやすい職場になるように、育児中シフト制度や、文字サイズを大きくするなど、職場環境の改善を行っている

といった、採用以外の活動をしっかりと行っているからです。



上記のような生産性向上のための業務の見直しや、職場環境改善を行わず、いままでの求人像である「正社員・フルタイム勤務」の人を求めて採用活動をしただけで、はたしてこのような成果を生むことができたでしょうか?


前回までに求人像の見直しを行わない限り、人手不足時代を乗り切ることは難しいと述べましたが、事例の事業者は生産性改善を含め求人像の見直しも行っていることが共通していると思います。






3.人手不足時代の新セオリー

事例から導かれる結論をここで述べます。

人手不足時代の採用・定着新セオリーは以下です。


・人手不足感があるからといって、「経験者・正社員・フルタイム」の条件で採用活動だけをしても効果が薄いケースが多い

・よって人手不足なのは、仕事のやり方や仕事の枠割分担が不適切で、生産性が低くなっている可能性をまずは検証する必要がある

・生産性向上の施策を打っても人員が不足している場合は、仕事の役割分担を見直し、パート活用やシニア活用を含めた「求人像の見直し」を行って採用活動をする必要がある

・これまで活用していなかった女性やシニア、パート活用に踏み出した場合、新規従業員層が働きやすい職場環境を整えるため、各種制度や人材育成の仕組みを構築する必要がある



人手が慢性的に足りないのは、どの事業者も同じです。
本当に採用しなければならないのか、もしくは無駄な仕事を削減することで乗り越えられるのか、その見極めをすることが肝要です。


以上をまとめると、人手不足感への対応としては、大きく「生産性向上」と「採用・定着」の2つの方向性が考えられます。

逆を返せば、経営における「生産性向上」と「採用・定着」のどこかに課題や問題があるから、人手不足という現象が引き起こされているといえます。

なので、自社のどこに人手不足につながる原因があるのかを探ることから始めなければなりません。

「人手不足現象を因数分解」することで、自社の原因を明確にすることができます。
以下に、「生産性向上」と「採用・定着」における、人手不足の原因を掘り下げた図を掲載します。






人手不足の要因は多岐にわたります。

現場では、「忙しいので人を入れてほしい」と思ったとしても、本当に人を入れることが解決策になるのかは疑うべきです。なぜなら、「仕事に無駄がある」「やらなくていい業務が存在している」「そもそも仕事の段取りが悪い」可能性もあるからです。

こうした仕事の生産性向上に責任を持つのは、管理者層や経営者層です。問題の深さによって、現場レベルの対応なのか、管理者・経営者レベルの対応が必要になるのか、まったく異なってくるのです。


これら、「生産性向上」と「採用・定着」の対応策を1つの図にまとめたものを示します。



この全体像が、人手不足時代の経営戦略の結論です。

どこに問題があり、どこを改善すべきか。人手不足時代では、経営全体を踏まえて、真の原因を見つけて1つ1つ対処することが求められるのです。




前述の2事例を、この全体像に当てはめてみましょう。



両方の事例も、最終的には採用や定着に結び付いていますが、それ以外の改善を行ったからこそ、最終的に成果が出ているのです。

人手不足の原因は複雑に絡み合っています。どこから手を付けるべきか、その対応方針を見誤るといつまでたっても真の原因が解決せず、人手不足が解消しない可能性があるのです。




4.人手不足対応ガイドライン

中小企業庁では、こうした人手不対応についてガイドラインを提示しています。



あくまでガイドラインのため、これを自社の経営にそのまま適用することが難しいケースがあります。よって、当方が概要レベルで人手不足対応フローを作りました。




あくまで参考までですが、人手不足の真の原因がどこにあるのかを分析し、適切な手段で解消することを念頭に置く必要があります。





5.よろず支援拠点での支援事例

ここで当方の支援事例を参考までに掲載します。



クリーニング業を営む事業者様で、各店舗でのパート離職に伴うシフト組成困難な状況になっていました。

そのため、本部で事務や管理を行うべき中核人材がシフトの穴を埋めるために店舗に入っており、なかなか本腰を入れた採用活動などに着手する時間を捻出できません。

業務についても日報が手書きであったり、タイムカードの集計作業が手作業で非効率であるなど、本部の事務作業軽減も課題となっていました。


結果的には、最初に本部管理スタッフの事務作業軽減を図ることで余裕時間を生み出し、その時間で採用・定着活動を行う、という順序で支援を行うことを提案しました。




人手不足を解消するためには順序があるということです。

本事例でも、定着率が悪いという課題がありますが、定着率の改善を図らずに採用活動だけしても、本質的な解決にはなりません。定着率を改善することが喫緊の課題であり、そもそもその改善活動を行う時間を捻出するための生産性向上が、最優先の課題ということになります。





6.人手不足改善のための手順

みなさまの会社で人手不足の改善を図るには、どのような手順で行えばよいでしょうか。

まずは、人手不足となっている原因を「なぜなぜ分析」して掘り下げてください。

これは、1つの現象の原因を掘り下げ、その原因が発生している更なる原因を掘り下げていく方法で、真の原因をあぶりだすために有効な手段です。


例として、採用ができない、といった現象の原因をなぜなぜ分析した事例の図を示します。




現象を引き起こしていると思われる原因を、現象の下に矢印でつないで記載していきます。その結果ツリー状の図を描くことができます。

真の原因と思われる事業まできちんと掘り下げることが重要です。




上記のように、真の原因が明確になれば、その原因に対して対策を打ちます。

けっしてツリーの上部の課題だけに性急に対策を打ってはいけません。真の原因に対策を打たないと、根本的な課題解決にはつながらないからです。

逆に、真の原因にきちんと対策が打てれば、ツリーの上部も変化するのです。






7.まとめ

人手不足 イコール 採用活動の強化、といった短絡的な行動だけでは、今後の人手不足時代の人事戦略・経営戦略としては打ち手不足です。

むしろ、こうした人手不足の全体像を把握して、生産性の向上や求人像の見直しを積極的にできる事業者は、今後の人手不足時代の環境に即座に適応できるので、よりアドバンテージを得られるのだと思います。



人口構造の変化に伴う労働市場の変化が始まっています。
そして今後は、人手不足の状況が大きく改善することは望めません。

よって、これまでの求人像を見直し、パートタイムやシニア・女性・外国人などの活用を見据える必要があります。そのためには、これまでフルタイムの正社員だけで行ってきた仕事の仕方を見直し、パートや非経験者でも業務を回せるようにする、職場環境改善や生産性向上が必要になってきます。


こうしたことを総合的に取り組むことが、今後の日本の生産性向上に資する活動になり、国際競争力の強化につながると信じています。


宮城県よろず支援拠点では、こうした人手不足対応のご相談を承っております。
まずはお気軽にご相談を頂ければと思います。



<筆者>
宮城県よろず支援拠点コーディネーター 中小企業診断士 佐藤 創。
人手不足対応広域アドバイザ。

第1回記事:http://www.yorozu.miyagi-fsci.or.jp/cafe/html/art/00054.html
第2回記事:http://www.yorozu.miyagi-fsci.or.jp/cafe/html/art/00057.html
第3回記事:本記事
2018.10.08 13:27 | 固定リンク | 経営ミニコラム
人手不足時代の経営戦略(2/3)
2018.09.25


宮城県よろず支援拠点コーディネーターの佐藤創です。

人手不足時代の経営戦略と題した連続コラムの2回目です。

前回は、現在の人手不足は人口構造に基づく変化であり、今後大きく改善することはないと述べました。

今回は外部環境がどのように変化したのかを紐解いていきます。具体的には、人口構造の変化や求職者の就労意識の変化についてみていきましょう。

これによってもはや今まで常識だった求人像や人事戦略が成り立たなくなってきつつあることを感じて頂ければと思います。



1.人手不足時代においても企業が求める人材像は昔から何も変わっていない

人手不足時代において、企業が求める人材像には変化があったのでしょうか?
興味深い統計情報があるので見てみましょう。アンケートで「人手不足だ」と回答した企業が求める人材についてです。



企業は、社会経験のある即戦力人材を求めていることがわかります。

これは以前から同じ傾向があり、人手不足時代においても以前とおなじ求人像を描いていることがわかります。


次に、人員が確保できない理由のアンケート結果も見てみましょう。



なんと、「自分の地域に求める人材がいない」と回答している割合がずば抜けて多いです。

これは本当なのでしょうか?

本当に地域に人材がいないのか、はたまた「企業が求める人材像が誤っている」または「企業が求める人材像と、地域人材のミスマッチが起きている」のでしょうか?




2.生産年齢人口の減少は止まらない

企業は今までと同じような求人像を描いており、かつ地域に人材がいないと嘆いています。
では、働く生産年齢人口の変化はどうなっていくのでしょうか。今後の生産年齢人口の推移を描いたグラフを見てみましょう。




生産年齢人口は減少の一途をたどります。このように、人材がどんどん少なくなっていく将来において、企業は今までと同じような求人像を描いていて大丈夫なのでしょうか。

もう1つ有名なグラフを紹介します。ワークライフバランス社の小室氏が書籍等で提唱する、人口オーナス時代への突入についてです。




現在は、生産年齢人口1人あたり、0.7人の非生産年齢人口を支えている格好になっています。しかし2050年ころには、支える非生産年齢人口が0.9人にまで増加することを示すグラフです。

このように生産年齢人口の減少は歯止めがかからない状況になると推測されています。

そんな時代に「自分の地域には人材がいない」などと悠長なことを言っていては事業そのものが成り立たないのです。




3.シニア・女性の活用を見据えた、求人像を見つめなおす

ではどうすればよいのでしょうか?
解決の糸口の1つは、シニア・女性・海外人材の活用です。

生産年齢人口の定義は、15~64歳の人口です。しかし、今の世の中65歳以上のシニアも元気で、バリバリ働ける方も多いのです。

ちょっと見方を変えて、生産年齢人口に65~75歳くらいのシニア層も含めてしまい、シニアにも働いてもらえれば、人手不足の状況も少しは改善するのです。


では、シニアの活用や働く意欲はどう変化しているのでしょうか。

まずは60歳以上のシニア層の雇用状況推移を見てみましょう。



年々活用が進んでおり、就労者が多いことがわかります。

次に、シニアの働く意欲についてみていきましょう。シニア層に何歳まで働きたいか聞いたアンケート結果です。




なんと、「働けるうちはいつまでも」と回答した割合が最も多いのです。

シニア層は働く意欲も高く、かつ年々活用も進んでいます。
しかしまだまだ活用は十分とは言えません。


それはなぜか?

シニア層が就職できなかった理由について分析しましょう。




勤務時間が希望と合わないことや、求人の年齢と合わないことが最も多い理由になっています。

つまり、求人側の条件と求職者の条件がアンマッチしているのです。


企業側がシニア活用を本気で考え、シニアでも働きやすい労働環境さえ構築できれば、人材の確保は可能なのです。

つまり企業側の「求人像の見直し」が求められているといえるでしょう。



同じように、女性活用の状況についても見ていきましょう。

まずはM字カーブの変遷についてです。



近年はM字のカーブが緩やかになり、出産・育児を経ても就労を継続する女性が多い傾向を示しています。

それもそのはず。次に専業主婦世帯と、共働き世帯の推移を見てみましょう。




もはや世の中は専業主婦前提ではないのです。
結婚した女性も就労することが前提の社会になっているのです。


女性が就職できなかった理由も見てみます。




シニアのケースと同じく、勤務時間が希望と合わないことや、求人の年齢と合わないことが最も多い理由になっています。

これも企業側の女性活用が考えられておらず、女性が働きやすい労働環境整備ができていないことが原因です。

今後の人材確保・活用には、やはり企業側の「求人像の見直し」が必要になるといえます。




4.今後の人材活用の方針は?

以上までに、生産年齢人口の減少と、シニア・女性活用の状況を見てきました。

今まで通りに、即戦力になってフルタイムでバリバリ働ける人材を容易に採用することは困難になってきています。そのかわり、シニア活用・女性活用ができるようになれば、人材を確保できるチャンスも見えてきました。


それでは、どのような検討を行うことでこれら人材活用が可能になるのでしょうか。

次回は人材確保のチャンスを生かすための、企業側の働き方改革の方針について見ていくことにしましょう。


<筆者>
宮城県よろず支援拠点コーディネーター 中小企業診断士 佐藤 創。
人手不足対応広域アドバイザ。

第1回記事:http://www.yorozu.miyagi-fsci.or.jp/cafe/html/art/00054.html
第2回記事:本記事
第3回記事:10/04予定
2018.09.25 17:48 | 固定リンク | 経営ミニコラム
人手不足時代の経営戦略(1/3)
2018.09.21

宮城県よろず支援拠点コーディネーターの佐藤創です。


現在は、大変な人手不足の状態にある事業者様が大勢いらっしゃると思います。

宮城県の2018年6月の有効求人倍率は1.73倍、同月新規求人倍率は2.51倍であり(出典:みやぎ経済月報2018年8月)、職業を選ばなければ完全雇用市であると言っていい状況です。

求職者からすると売り手市場で大変良い環境ですが、求人を出す企業としては「人の奪い合い」のような様相を呈しており、なかなかに頭を痛めている状況かと思います。


こういった人手不足時代では、

・単に人が採用できない

・賃金をあげなければ従業員が離職する

といった、表面的な事象にとらわれがちですが、短絡的な対策だけで採用・定着の問題が解決するわけではありません。



また単に「今は一時的に人手が足りないが、そのうちなんとかなるだろう」という考え方も、少々問題があるといえます。なぜなら、今般の人手不足は「人口構造の変化による労働市場の大幅な変化」が原因であり、ちょっとやそっとの状況で改善することは見込めないからです。

こうした背景を踏まえ、中長期的な人手不足時代への対応が求められていると考える必要があります。

本コラムでは、3回にわたり、人手不足時代を乗り切るための経営戦略・人事戦略のギアチェンジを図るために、どのような戦略・考え方をすればよいのかをお伝えしたいと思います。



第1回の今回は、事業者さまにて人手不足の状況が解決しないのはなぜか、といった問題提起をしたいと思います。


前述のとおり、今般の人手不足とは、

・人口構造の変化によって、労働市場という外部環境が変わった

ことが根本原因です。

外部環境とは、我々が事業を営む環境そのものです。地球環境や日本の情勢など、個人ではなかなか動かしがたい周囲環境全部を含みます。このうち、「日本の人口構造の変化」および、それに伴う「労働市場の変化」が変わってきています。


外環境を変えることは並大抵の努力では難しいです。よって、1事業者としては、これを所与として受け入れ、自分が変化する以外に選択肢はありません。よって、

・外部環境の変化は受け入れるしかないため、会社の人材戦略および事業戦略を見直す時期にきている

といえるのです。




そういった背景を踏まえますと、みなさまの会社で人手不足が解消しない理由は大きく2つあると推測しています。

1)人手不足がなぜ発生しているのか、真の原因と対策を体系的に把握していない

2)人手不足は一時的な状況だと感じており、人手不足に対応した事業戦略を検討していない

つまり、外部環境が変わったにもかかわらず、皆様の会社での事業戦略・人事戦略を変化させていないので、現在の外部環境に適応できなくなっている可能性が非常に高いということです。


環境に適応できない種は滅ぶ、というチャールズ・ダーウィンの自然選択説を引き合いに出すまでもなく、事業環境に適応できない事業者は長期的な繁栄が望めないのは自明のことです。



では、外部環境の変化にどのように対応していけばよいでしょうか。また、外部環境の変化とは具体的にどのような変化なのでしょうか。

次回以降、その内容を紐解いていきたいと思います。




2018.09.21 08:41 | 固定リンク | 経営ミニコラム
「儲かる仕事マトリックス」で商品展開を考えてみよう(1/2)
2018.08.17


宮城県よろず支援拠点のコーディネーター島田です。


「儲かる仕事マトリックス」についての情報をみなさまと共有したいと考えております。


「儲かる仕事マトリックス」は当方が考えた、商品・サービスをどのように展開してくべきかを検討するツールの1つです。


横軸にお客様の商品購入頻度(年間購入回数などリピート率を表す指標ならひとまずOK)、縦軸に時間あたりの付加価値を設定し、4つのエリアに分割します。

右上エリアを金持ちエリア、右下を起業家エリア、左上を専門家エリア、左下を貧乏エリアと呼んでいます。

もちろん、旨味のある仕事は金持ちエリアと専門家エリアで、疲弊するだけの仕事は起業家エリアと貧乏エリアであります。


さて、このマトリックスが描けたら、自社の商品サービスがどのエリアに属しているのか分類分けしてみてください。戦略的な意図を持って商品サービスを設計して営業していなければ、起業家エリアと貧乏エリアの仕事ばかりになっているはずです。

業界ナンバーワンの地位を確立している企業を思い浮かべてください。金持ちエリアまたは専門家エリアの仕事をしっかりと持っていることが多いです。



儲かる仕事マトリックスには、①金持ちエリア、②専門家エリア、③起業家エリア、④貧乏エリアが存在します。

自社の商品サービスを分類分けした結果、③起業家エリアや④貧乏エリアの仕事があった場合、次のような対応が必要です。

③起業家エリアの仕事があった場合の対策
 値上げを実施して、付加価値を高める
 作業時間を短縮できるように簡略化、簡素化をはかる
 重要ではない作業は、外注化も視野に入れる

④貧乏エリアの商品があった場合の対応
 撤退する(撤退以外の選択肢はない)

リピート注文が発生している③起業家エリアの仕事はビジネスモデルの見直しをはかれば①金持ちエリアの仕事に化ける可能性があります。既存のお客様に「なぜ、自社の商品サービスを利用していただけているのか?」を質問する必要がありますね。

お客様の意見に大きなヒントがあることが多いです。

次回の最終回は、儲かる仕事マトリックスで稼いでいる会社の実例を紹介します。

2018.08.17 20:53 | 固定リンク | 経営ミニコラム
経営環境の分析に役立つかも!?政府系のデータサイトを見てみよう(3/3)
2018.08.03
みなさんこんにちは。

宮城県よろず支援拠点コーディネーターの鯨井文太郎です。経営改善や事業再生に関する支援を中心に担当しております。


前々回から3回に渡り、「経営環境の分析に役立つかも!? 政府系のデータサイトを見てみよう」と題して、下記の通り3つのサイトを紹介していきます。

 1回目:RESAS(地域経済分析システム)
 2回目:J-STAT(地理情報システム)
 3回目:ローカルベンチマーク(企業の経営状態を把握する為のツール)

RESAS(1回目)とJ-STAT(2回目)は、地域の人口動態や経済環境の簡易な分析に活用できます。つまり企業の外部環境分析に活用できるシステムとして紹介いたしました。


 3回目となる今回はローカルベンチマークについて紹介いたします。
 
ローカルベンチマークは、主に企業の内部環境を定量面・定性面から分析するのに役立つツールです。その結果、自社の優位性はどこにあるのか、お客様に対して自社がどのような価値を提供できるか、といったことが検討できるようになります。


 まずは、検索サイトで「ローカルベンチマーク」と検索してみると、次の様なサイトにたどり着きます。



経済産業省が運営しているローカルベンチマークの画面となります。このページ内の
「【最新】ローカルベンチマークツール(2018年5月ツール改訂版・最新基準値使用)」というエクセルファイルを活用します。
以下、ローカルベンチマークで出来る主な分析内容について見ていきましょう。主に3つあります。



(1)財務分析シート



 上記画面は、財務分析結果(例)を示したシートです。各財務指標を点数化し、同業他社との比較が出来るツールとして活用できます・・・と、ここまでは、通常の財務分析ツールと変わりありません。

 ローカルベンチマークはこれだけではありません。他にも以下2つのシートを活用して自社の分析を行います。



(2)非財務ヒアリングシート(商流・業務フロー)
自社の業務フローや商流を分析することで、顧客価値をどのように提供しているかが分かります。



上記表は、非財務ヒアリングシート(商流・業務フロー)の記入例です。自社の商流や業務フローを分析する機会は意外とありません。これらを分析することで、自社が顧客価値を提供するまでの流れや、その背景を認識することが出来るようになります。



(3)非財務ヒアリングシート(4つの視点)
自社の現状と将来目標を理解し、その実現に向けた課題と対応策が明らかになります。



 上記表は非財務ヒアリングシート(4つの視点)の記入例です。
経営者、関係者、事業、内部管理体制の4つの視点から、自社の特長を分析するとともに現状と将来目標を総括し、現状と将来目標とのギャップを基に課題と対応策を抽出するという流れです。「頭の中に自社の全てが入っている」という経営者の方も多いですが、実際に書き出してみることで、自社に関する新たな発見があったりします。


 以上のように、

・財務分析
・顧客価値の提供
・自社と現状と将来分析を理解した上での課題・対応策の明確化

 といった観点から、複合的に自社の分析が実施できるという点が、ローカルベンチマークの特徴といえます。

更に、筆者はもう一つの観点から、ローカルベンチマークは自社の分析の為に有意義なツールであると考えています。それは、

自社の分析結果や自社の方向性を、金融機関と共有する為のツールになる

 という点です。


いくら、効果的な分析ができても、これを経営者のみが理解できているという状況では意味がありません。このツールは経済産業省が策定したということもあり、金融機関や支援機関などに広く周知されています。

例えば、経済産業省「企業の多様な資金調達手法に関する実態調査報告書」で金融機関に対して実施された調査によると、以下のような結果がでています。


【グラフ1】金融機関におけるローカルベンチマークの認知度について


2016年で、ローカルベンチマークについて、「内容をよく知っている」と「聞いたことがある」の合計(認知度)は 94.1%となり、ほぼ全ての金融機関に認知されている




【グラフ2】金融機関におけるローカルベンチマークの活用状況について


2016年でローカルベンチマークを「活用している」金融機関は(36.5%)、「活用を検討している」金融機関は32.5%と合わせて69%に達している。




【グラフ3】ローカルベンチマークの活用後の効果について


ローカルベンチマークの活用後の効果(複数回答)として、「顧客企業の事業計画作成に繋がった(28.3%)」、「与信額が増加した(20.1%)」、「顧客企業における新規事業の開拓や事業構造の見直しに繋がった(15.1%)と続いている。



 金融機関はローカルベンチマークを認知・活用しており、その効果についても十分認められていると言える結果となっています。

 また、金融機関だけでなく、従業員や後継者と、理念や課題、方向性等を共有する為のツールとしても活用できますので、作成にチャレンジすることをお勧めいたします。

 但し、ローカルベンチマークの作成に際しては、ちょっとだけコツが要ります。単純にシートを埋めるという作業だけでは、中身のあるシートを作成することは困難です。

 そこで、当拠点では、ローカルベンチマーク等の活用による自社の分析や経営計画作成に関する支援も実施していますので、是非ご活用ください。ご相談お待ちしております!

 なお、具体的な活用方法についても紹介させて頂きたいところでしたが、冒頭の経済産業省のHPに、具体的な事例が「モデル事業報告書」として掲載されています。ご参照ください。

 以上、「経営環境の分析に役立つかも!? 政府系のデータサイトを見てみよう」と題して3回に渡り、経営コラムに寄稿させて頂きました。

お付き合い頂きましてありがとうございました。

2018.08.03 08:44 | 固定リンク | 経営ミニコラム

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