運転資金について知っておきたいこと(1/3)
2019.01.24



おはようございます。

宮城県よろず支援拠点コーディネーターの細野です。
今回から3回に渡って、私の方で経営ミニコラムを担当いたします。

今回のテーマは「運転資金について知っておきたいこと」と題して、運転資金について最低限知っておきたいことを3回に分けてご紹介していきます。

第1回目(今回)は、運転資金の基本と業種別運転資金。
第2回目は、事業に必要となる資金の計算方法。
第3回目は、事業拡大と増加運転資金。
・・・といった流れとなります。

それでは本題に入ります。
会社を経営している方であれば、「運転資金」という単語を聞いたことはあるかと思います。
ただ、それが具体的に何を指していて、どうやって計算するのかということまで理解している方はそんなに多くはいない気がします。

そもそも、運転資金とは何かということについてですが、ざっくりいうと「商売を回す上で必要となる資金」です。

運転資金は以下のように計算します。

運転資金 = 売上債権 + 棚卸資産 – 仕入債務

売上債権・・・売掛金、受取手形等
棚卸資産・・・材料、仕掛品、製品、商品の在庫等
仕入債務・・・買掛金、支払手形等

例えば、以下のような卸売業の会社があるとします。
月商:100万円
売上原価:70万円
商品在庫:50万円(在庫期間0.5か月)
売掛金:100万円(回収期間1か月)
買掛金:70万円(支払期間1か月)

この会社の運転資金は以下の通りです。
100万円(売上債権)+ 50万円(棚卸資産)- 70万円(買掛金) = 80万円

この会社の運転資金は80万円ということですが、これが何を意味するかというと、この会社の商売を回す(継続していく)ためには、少なくとも80万円のキャッシュが必要ということです。


そもそも何故、運転資金が必要になるかというと、売上と入金のタイミング、仕入れと販売のタイミングが違うからです。
このタイミングの差を埋めるために必要な資金が運転資金です。

売上と入金が同じ、つまり現金商売であれば、売上債権は0のはずです。
また、仕入れた商品が即販売できるのであれば、在庫、つまり棚卸資産も0になります。
そういう商売の形態であれば、運転資金は必要ありません。

しかし、多くの商取引では、掛売がありますし、仕入れた商品がすぐに売れるわけではないことが多いでしょう。
ですので、多くのビジネスでは運転資金を用意する必要があるのです。


なお、必要な運転資金は業種やビジネスの形態によって変わってきます。
多額な運転資金が必要になる業種・業態と、そうでもない業種・業態があるのです。
今回は身近な業種でいくつか例を出してみましょう。


1.飲食業
飲食業は運転資金がほとんど無い業種の代表例です。
何故なら、売掛債権、棚卸資産がほとんど無いからです。

売上債権はクレジットカード利用の場合くらいで、カード取扱がないお店は売掛金はほぼゼロではないでしょうか。(ツケ払いがあるのなら別ですが)

棚卸資産である食材もほとんど当日に使い切ってしまうのではないでしょうか。
ただ、保存がきく食材やお酒などを多く置いている場合は多少あるかもしれません。

そして、食材等の仕入れを掛け取引している場合は、仕入債務は発生します。

よって、場合によっては、運転資金がマイナスになる場合もあります。
つまり、仕入債務の支払い分、資金に余裕ができるということです。
これを「回転差資金」と呼びます。

ちなみに、飲食店の王道の戦略としては、この回転差資金で、どんどん新規出店を行って拡大を図っていくことでスケールメリットを出していきます。


2.小売業
現金取引が多い小売業であれば、飲食業同様に運転資金はあまり必要ない業種です。

ただ、小売業の場合、仕入れから販売までのタイムラグは一般的には飲食業よりは長いので、棚卸資産は大きくなりがちです。

仕入れてから販売までが長い商品が多い場合は、その分の運転資金が必要になるのでご注意ください。

特に高額商材を扱う会社の場合、商品の回転率が低いので棚卸資産が大きくなり、その分運転資金も多額になりがちです。


3.店舗型サービス業(理美容、エステ、マッサージ店等)
理美容、エステ、マッサージ店等の店舗型のサービス業も、基本的に運転資金は必要ない業種です。

やはり売上は現金取引が多いでしょうし、さらにこういった業種の場合、在庫がほとんどありません。(シャンプーとかはあるのでしょうが)

さらに、エステやマッサージ店だと、回数券を販売している場合がありますね。
この回数券の販売が大きいと、将来の売上分も先に入金されることになるので、さらに運転資金は不要になります。

これらの業種も回転差資金が生まれるので、これを使って新規出店をしていくのが王道の拡大戦略です。


4.講師、教室、各種コンサルティング等
同じサービス業でも、講師、教室運営、各種コンサルティング業の場合だとちょっと異なってきます。
これらの業態の場合、支払条件次第で必要運転資金は全く異なります。

支払条件として前払いが多い場合は、運転資金は不要です。資金的にも余裕ができます。

逆に後払いが多い場合、つまり例えば「サービス提供完了後の翌月末払い」とかにすると、その分の売上債権が運転資金になります。

外注でもしていない限り、支払債務はほとんどないでしょうから、売上債権=運転資金になることが多いかと思います。

極端な例かもしれませんが、お仕事によっては「年度末一括払い」という条件があります。
仮にすべての仕事をその条件でやってしまうと、運転資金が年商と同じということになってしまいます。
売上になるからと、何も考えずにホイホイ受けていると、いつまでたっても入金が無くて資金難に陥ってしまうということにもなりかねませんのでご注意ください。


5.卸売業
卸売業の場合は、一般的には相応の運転資金が必要になる場合が多いです。
現金問屋でもない限り、普通は売上も掛取引が中心になるからです。

また、取扱商品が多い場合、在庫も相応に多くなります。

運転資金を小さくするには、なるべく仕入れから販売までのタイムラグを無くすことです。
粗利益率の低い卸売業の場合、仕入債務もそれなりの金額になるはずなので、仕入れた商品を素早く販売することで、棚卸資産を減らせれば、運転資金は抑えられます。

そのためには取扱商品の選別が必要になりますね。


6.製造業
製造業は運転資金が必要となる業種の代表例です。

まず、完成品だけでなく、材料や仕掛品も在庫になりますし、製造に一定の時間を要するため、棚卸資産は大きくなりがちです。

また、製品販売の際も売掛取引が一般的なうえに、支払いサイトも長いことがあります。
運転資金を小さくするためには、なるべく材料や中間部品、製品在庫を持たない、短い期間で製造するといったことで棚卸資産を少なくするための対策が必要になります。
かの有名なトヨタのジャストインタイムなどはまさにその典型ですね。

また、売掛サイトが短くなるような流通ルートを選ぶ、直販を行うなどで、売掛金を少なくする対策もあるでしょう。

なお、ソフトウェア開発業も運転資金の構造的には製造業に近いです。


以上、身近な業種・業態を例に、いくつか運転資金についての特徴を書いてみました。
あなたの業種・業態ではどのくらい運転資金が必要かわかりましたか?


ところで、運転資金というと、会社を維持するために必要な資金というイメージで捉えられている方もいらっしゃいます。

実際、銀行融資申し込みの際にも「3か月分の運転資金をお願いします」といって、人件費や家賃などの固定費も含めた金額で申し込み、その金額で融資を受けたことがある方もいらっしゃるでしょう。


次回は、運転資金の構造を基礎に、固定費も含めた事業に必要となる資金の計算方法について書いてみたいと思います。

これを知っていると、銀行融資申し込みの際に、申し込み金額が必要な理由をスマートに説明できるようになります。
2019.01.24 10:16 | 固定リンク | 経営ミニコラム

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