シリーズ:なぜ組織が成長するためには適切な「余剰=あそび」が必要なのか?(2/3)
2018.06.14


おはようございます。

宮城県よろず支援拠点コーディネーターの佐藤創です。




前回に引き続き、「なぜ組織が成長するためには適切な「余剰=あそび」が必要なのか?」と題して、適切な余剰が経営に与える影響を探っていきます。

<参考>
第一回記事はこちら



前回は、余裕がなさすぎる事で組織の長期的な成長のための活動ができなくなり、組織の高度化が遅れてしまう可能性について「民俗学」から探っていきました。




2回目の今回は「生物学」から探っていきます。




生物学や遺伝学、動物行動学を紐解くと、我々の常識では考えられないような方法で、種を残存させようとする生物がたくさんいることに気づきます。




「種を残す」ことは、つまるところ「組織を残す」=「組織を存続させる」ことと同義だと思っています。




生物界のいろんな生き物が、どのように創意工夫し、また差別化して種を残そうとしているのか、その点から「組織論」を考察してみましょう。




さて今回も、頭の体操と思ってお付き合いいただけますと幸いです。










■自然淘汰を考える

生物学、特に動物行動学(および遺伝学)では、ヒトも含め「自己の遺伝子を残す」ことを最優先に進化をしてきました。


(参考文献:リチャード・ドーキンス,利己的な遺伝子,紀伊國屋書店,2006年)




環境に適応できた種は遺伝子を残し、適応できなかった種は遺伝子を残せない。
よって、自然淘汰によって環境に適応した遺伝子のみが残っていき、その種は栄える、というのが、チャールズ・ダーウィンが論文「種の起源」で提唱した自然選択説です。

(参考文献:チャールズ・ダーウィン,種の起源)




これは生物界だけでなく、経済界でも同じことが言えるのではないかと思っています。




現在の環境に適した企業や組織はますます栄え、適さなかった企業や組織は衰退する。

私はまさに自然選択説が経済界でもそのまま機能しているように思えてなりません。




こうした意味でも、いろんな生物がどのように種を残そうと企てているのか、その仕組みを見ることは、そのまま経済界での生き残りのヒントをくれているように思います。






■有性生殖はなぜ存在するのか?

さてここで、根本的な問いをしてみたいと思います。




ヒトも含め、なぜ男と女、つまりオスとメスが存在するのでしょうか?




なぜ生物は有性生殖によって子孫を残そうとするのでしょうか?




わかりますか? ちょっと考えてみてください。



















答えは、




「遺伝子を“かき混ぜる”ことによって、多様な特性を持つ子孫を残し、自然環境の変化に適応するため」




なのです。







みなさんが想像したであろう?ロマンチックな答えでなくてすみません。




皆様ご存知の通り、有性生殖によって、子供は父親と母親の半分ずつの遺伝子を持ちます。




もし仮に、父親の遺伝子に決定的な欠陥があり、長く生きられないとします。
その場合、もし父親の遺伝子を子供が100%引き継いだのならば、父親と同じく長くは生きられず、その種は相対的に生命力が低いので、やがては絶滅する可能性が高くなります。




そこで母親の遺伝子を半分もらうことで、遺伝子を文字通り「かき混ぜる」ことにより、多様な特性を持つ子孫を残すわけです。




ただし半分ずつなので、急激な変化は起こりません。現在の環境にある程度適した遺伝子を持ちつつ、長期的には多様な自然環境に適応できる遺伝子を持てるようになります。




生物はこうして遺伝子をかき混ぜることで、自然環境の変化に適応するような仕組みを構築してきました。




もし、今の環境に適した遺伝子だからと言って、その遺伝子を100%残すような生物がいたのなら、外部環境の変化が発生したときに、その生物は耐えられず一気に絶滅することになります。




生物界における余剰とは、この遺伝子の多様性のことと言えるでしょう。




多様な遺伝子を持つ種が存在するからこそ、多様な環境にも適応できるのです。




現在の環境だけに適した種がいればいい、という近視眼的な視点では、長期的な種の繁栄は絶対にのぞめないのです。




これは生物界における自然淘汰を生き抜くための生物の知恵であり、普遍的な真実といえます。










■会社に当てはめ考えてみよう

この考え方は、そのまま組織運営にあてはめることができます。



現在の仕事を回すだけの人員体制を構築したり、現在の仕事に求められるスキルだけを獲得した組織を考えてみてください。



今の経済環境や仕事環境が続く限りは問題ないように見えますが、いったん受注が激減するなどの外部環境変化が起こった場合、そのような危機に対応できる人材やスキルを保有していないため、一気に経営が悪化します。



こうした危機に力を発揮する人材がいればいいのですが、多様な人材やスキルを推奨せず、単一の人材やスキルを推奨してきたことにより、環境変化や危機対応ができません。




結果的にその組織は弱体化し、自然淘汰されることになります。







以上から、組織が長期的に存続するためには、多様な価値観やスキル、経験を持つ人材を確保し、外部環境変化に適応できるしなやかな組織体制を構築することが必須だといえます。



今すぐに必要とはされていない技術やスキル、事業に着手することは、こうした多様性を確保し、柔軟な組織に変革するためには必要なことなのです。







蛇足ですが、ミジンコは面白い生態を持っています。

ミジンコは水たまりや池などに生息していますが、環境変化の少ない安全な状態では、メスしか存在しません

メスが自分の遺伝子の100%を持つクローン(メス)を生むことで、現在の環境に適した遺伝子だけを持つミジンコで生活をします。




しかし、いったん水が濁ったり有毒成分が混入したりするなど、外部環境の変化が発生した時には、なんとオスが生まれてきます。




そして有性生殖を行うことで遺伝子をかき混ぜ、外部環境の変化に耐えられる種を生み出そうとするのです。




このようにして 多様性 = 余剰 を作ることで、外部環境の変化に適応しようとするのです。







いかがでしたでしょうか。

ミジンコからも、組織の普遍的な存続のためのヒントを得られたのではないでしょうか?




今の環境に適した人員だけを抱えることのリスク、今必要な技術だけを取得することのリスクを、生物学から感じ取っていただけたのではないかと思います。




前向きな余剰は組織の伸びしろであり、かつ危機管理能力の一翼を担うものでもあります。

今だけでなく、ちょっと先を見越して事業計画および人材戦略を練ってみるのも楽しいですね。




さて最終回の次回は、経営学に立ち戻り、経営に余剰をもたらすストックビジネスを構築するためのヒントを探っていきます。

次回もお楽しみに!



<筆者紹介>
佐藤 創(さとう そう)。中小企業診断士、および高度情報処理技術者、キャリアコンサルタント。

「変化を求め明日を企てる事業者様の良き参謀役」として、ビジョン実現に向け経営者と伴走しながら共に汗をかく、ハンズオンでの支援を身上とする。独自のビジネスモデル分析による経営改善手法が好評。

得意な支援ジャンルは、新規事業開発・事業戦略による売上拡大、IT導入・活用による生産性向上および販路開拓、金融支援(リスケ等)を伴う経営改善・事業再生。



<連載記事>シリーズ:なぜ組織が成長するためには適切な「余剰=あそび」が必要なのか?

第1回記事
第2回記事
第3回記事
2018.06.14 22:28 | 固定リンク | 経営ミニコラム

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